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婚外子相続差別違憲決定の実務への影響(1)

弁護士 東重彦

平成26年6月3日更新

 最高裁判所は、平成25年9月4日、大法廷裁判官全員一致での決定(以下「本決定」といいます。)において、婚外子の相続分についての民法900条4号ただし書き(以下「本規定」といいます。)を、違憲と判断しました。
かかる決定を受け、本規定は改正・削除されましたが、違憲判断の遡及効の問題を中心に、実務において議論が生じておりますので、ご紹介いたします。

1 本決定の意義
 従来、本規定については、「民法が法律婚主義を採用している以上、法定相続分は婚姻関係にある配偶者とその子を優遇してこれを定めるが、他方、非嫡出子にも一定の相続分を認めてその保護を図ったものである」とし、立法に与えられた合理的な裁量の範囲を超えたものとは言えないとする平成7年7月5日の最高裁判所裁判官の多数意見による合憲判断がありました。
ただ、かかる判断に対しては、最高裁判所裁判官の複数の反対意見や、法改正による是正を示唆する補足意見もあったところです。
 本決定は、現在までの社会の動向、家族形態の多様化、国民の意識の変化等を総合的に考慮して、「家族という共同体の中における個人の尊重がより明確に認識されてきたことは明らかであるといえる。そして、法律婚という制度自体は我が国に定着しているとしても、上記の様な認識の変化に伴い、上記制度の下で父母が婚姻関係になかったという、子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきであるという考えが確立されてきているものということができる」ことから、「立法府の裁量権を考慮しても、嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を区別する合理的な根拠は失われて」いるとして、憲法14条1項違反と判断しました。
 いわゆる立法裁量論に立ちながらも、「子どもを個人として尊重しその権利を保障すること」の重要性を説いているものと考えられ、この点に本決定の大きな意義を認めることができます。

2 違憲判断の効力と評価
 本決定は、過去の最高裁の合憲判断を変更するものではないこと、本件の相続開始当時(平成13年7月当時ということです。)から本決定までの間の確定した相続に関する裁判や合意の効力には影響しないとしています。その結果、遺産分割協議等の確定が本決定の前か後かによって、同様に婚外子であっても扱いを異にすることになります。
 このような扱いについては、過渡期におけるやむを得ないものと考えられています。むしろ、裁判官全員一致での本決定の違憲判断は、かかる扱いをすることにより法的安定性を重視した結果が可能であったからなしえたとも評価されています。

 次回は、本決定が家庭裁判所の具体的事件処理にどのように影響するかをご説明いたします。 

→ 婚外子相続差別違憲決定の実務への影響(2)へ 
                                                                    

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