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リツイートに伴う写真のトリミングが著作者人格権の侵害になり得る旨の最高裁判決   (弁護士 寺中良樹)

新型コロナ感染症対応のため、大阪地裁では(他の裁判所でもおおむね)、今年4月5月の緊急事態宣言期間中は、ほとんど全部の裁判期日が延期となりました。
これを挽回するため、今年は、裁判所はお盆休みなしで期日を開く部が多いようです。例年、裁判所は3週間程度の夏季休廷期間を設けることが多い(もっともその間、裁判官が休んでいるわけではないようです)のですが、今年はそれがない部が多いようです。

閑話休題、このコラムを書く順番が回ってきましたので、近時の最高裁判決を眺めましたが、大きく報道されたものとしては、ツイッターのリツイートに伴う写真のトリミングが著作者人格権の侵害になり得るとの判決(令和2年7月21日第一小法廷判決)が目に付きます。
既にさまざまなところで論評されていますが、事案としては次のとおりです。
原告は写真家であり、スズランの写真の隅に名前を記載して自身のホームページに掲載していたところ無断でツイートされ、さらにリツイートされました。いずれも画像はツイッターの仕様によって自動的に上下が切り取られ(トリミングされ)、原告の名前が表示されなくなりました。原告は、リツイートが著作権法上の「氏名表示権」の侵害であるとして、ツイッター社に対し、リツイートした人達の発信者情報を開示するよう求める訴えを起こしました。原審(知財高裁平成3年4月25日判決)は、結論として当該リツイートが著作権侵害であることを認め、発信者情報の開示をツイッター社に命じました。これに対してツイッター社は、リツイート者が著作物(写真)の利用をしていないから著作権法に抵触しないとか、トリミング画像をクリックすると(氏名表示がある)元画像を見ことができるので、氏名表示権の侵害に当たらない、と主張しましたが、最高裁はツイッター社の主張をいずれも斥け、原審の結論を支持しました(なお、原審で原告は、氏名表示権以外の著作者人格権侵害の主張もしていたようですが、割愛します)。

上記の判決については、ユーザーの利便性を損なうとか萎縮的効果をもたらすといった批判的な見解がいくつか見られるようです。実際、5名の裁判官のうち1名は、そのような理由を述べて多数意見に反対しています。
たしかに、画像のトリミングはツイッターの仕様により自動的になされるものであり、リツイート者がトリミングした(著作権侵害行為をした)というのは、一般感覚としては違和感を感じる人も少なくないでしょう。しかし、リツイート者は、ツイッターがそのような仕様であることが分かっていて、それを利用しているのですから、規範的に考えると、トリミング画像の表示行為を含めたリツイート行為は、リツイート者によってなされたと言わざるを得ないと思います。
このように解しても、一般的にリツイート者には著作権侵害行為に関して過失はないでしょうから、リツイート者が差止(削除)以外の責任を負うことはなく、リツイート者の負担としてはそれほど大きいものではないでしょう。
もっとも、いかなる場合もリツイート行為が削除の対象となるかというと、場合によっては、権利濫用の法理を利用して違法性を阻却すべき場合はあるように思います。

以上

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