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遺産共有状態にある特定不動産の共有持分が第三者に譲渡された場合と共有関係の解消方法    (弁護士 松本史郎)

1 最高裁 昭和50年11月7日判決について
この判決は次のように判示しています。
(1)  共同相続人(A、B、Cの3名とする)が分割前の遺産を共同所有する法律関係は、民法249条以下に規定する共有としての性質を有する。
(2)  共同相続人の一人Aから遺産を構成する特定不動産について、共有持分を譲り受けた第三者(甲とする)は、適法にその権利(持分権3分の1)を取得し、他の共同相続人(B、C)とともに当該不動産を共同所有する関係に立つ。この甲、B、Cの共同所有の関係は民法249条以下の共有としての性質を有する。
(3)  この第三者(甲)が共有所有関係の解消を求める方法として、裁判上のとるべき手続は、民法907条に基づく遺産分割審判ではなく、民法258条に基づく共有物分割訴訟である。
(4)  共同相続人の一人(A)が特定不動産について有する共有持分権を第三者に譲渡した場合、その譲渡部分は遺産分割の対象から逸出する。
(5)  共同相続人の一人(A)が第三者(甲)に譲渡した持分部分を除いた残余の持分部分は、なお遺産分割の対象とされるものである。
(6)  第三者(甲)が持分権に基づいて提起した共有物分割訴訟は、当該不動産を第三者(甲)に対する分与部分と持分譲渡人(A)を除いた他の共同相続人(B、C)に対する分与部分とに分割することを目的とするものであって、分割判決によって共同相続人(B、C)に分与された部分は、なお共同相続人間の遺産分割の対象となる。

2 甲とB、Cの分割手続(150坪の土地の分割を例にする)

(1)  現物分割の場合
甲に50坪の土地を分与し、B、Cに100坪の土地を分与する場合、B、Cの100坪は遺産共有状態にあることから、共有関係の解消は他の遺産とともにAも入れて遺産分割手続を行うことになります。この場合、Aが既に取得した甲への持分売却代金は遺産分割の対象になるとする考え方が有力です。
(2)  競売分割の場合
競売による分割の場合、甲とB、Cは、競売による売得金を取得します。この場合、B、Cの売得金は可分のものであるから、当然、B、Cに法定相続分で分割されるとする考えが有力です。ただし、B、Cの売得金は不動産が現金に代わっただけだとして、遺産分割の対象となるとする考え方もあります。

3 昭和50年の最判と衡平の問題
Aは、共有持分3分の1を第三者である甲に譲渡して、その売買代金を取得しています。
仮にA、B、Cの3名による遺産分割手続で分割手続を行ったならば、Aに多額の特別受益があってAの具体的相続分がゼロもしくは具体的相続分が法定相続分3分の1より小さくなる場合又はB、Cに寄与分が認められてAの具体的相続分が法定相続分3分の1より小さくなる場合などが想定されるが、この場合にA、B、Cの衡平性をどのようにして保つのかについて定説はありません。
このようなケースでは、B、CがAに対して不当利得返還請求権を有すことを認めるとか、遺産分割審判の中でAに一定の債務負担を課するなど色々な考え方があります。

以上

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