GLOBAL Law Office

  1. HOME
  2. リーガルトピックス
  3. 民事訴訟のIT化について  (弁護士 寺中良樹)

リーガルトピックス

リーガルトピックス

民事訴訟のIT化について  (弁護士 寺中良樹)

近時、大手回転寿司チェーンの「かっぱ寿司」を運営する企業の社長が、前勤務先の同業チェーン「はま寿司」から、営業機密情報を不正に入手したという、不正競争防止法違反の疑いで逮捕されました。
具体的にどのような方法で入手したのかは詳しくは把握していませんが、一般論として言いますと、不正競争防止法違反が認められるためには、「はま寿司」が問題の情報(仕入れデータや店舗別売上データと聞いています)を「秘密情報」として管理していなければなりません。大事な情報だ、というだけではダメで、企業秘密として管理していなければならないのです。具体的には、一部の者しかアクセスできないようにする、秘密情報であることを明示する、といったことです。平時の情報管理体制の構築と運用がかなり大事です。
また、今後刑事手続が進んでいくと、次は「はま寿司」から「かっぱ寿司」に対して、民事的な損害賠償請求が飛んでいくことは間違いありません。不正競争防止法違反は不法行為であり、損害額を推定する規定もありますから、相当に高額な請求が出てくることは確実で、その行方も実務家としては気になるところです。

前置きが長くなりましたが、今回は、民事訴訟のIT化に関するお話をしたいと思います。

日本の民事訴訟手続きは、諸外国と比べてもIT化が遅れており、それが訴訟の長さや手間の増大を招いていると言われていました。これを受けて、政府が設置した「裁判手続等のIT化検討会」は、平成30年に、民事訴訟のIT化に関する報告書を公表し、制度改革を促しました。
これを踏まえ、まず第一段階として、令和2年から、民事訴訟手続き中の「争点整理」をウェブ会議で行う試みが始まりました。これまで「争点整理」は、「弁論準備期日」という期日を何回か続けて、双方(代理人)が裁判所に出頭して訴訟の争点を絞っていくことが多かった(民事訴訟の多くの部分はこの「争点整理」に費やされています)のですが、これをウェブ会議にして、双方出頭不要としたものです。これまでも、民事訴訟法上は弁論準備期日をウェブ会議で行うことは可能であったらしいのですが、実際はまったく実施されていませんでした。当初はウェブ会議の扱いに慣れておらず、手間取ることも多かったのですが、慣れてみると、代理人としては、裁判記録を期日ごとに持ち歩かなくて良い(裁判記録は案件によっては膨大な量になります)、裁判所や相手方代理人と次回の期日の予定を合わせやすい、など、便利が大きいものです。偶然にも、試行開始と時を同じくして新型コロナ感染症が拡大し、密が避けられるようになったため、ウェブ会議方式が広がりました。

続いて、令和4年5月に、民事訴訟法が大きく改正されました。その最も重要な部分は、民事訴訟のIT化に関するものです。これは私たち弁護士(代理人)にとって、平成8年の民事訴訟法の大改正以来の制度改革と言って良いものです。概要は下記のとおりです。

1  訴状提出がオンライン(デジタルデータ)でできるようになります。
特に弁護士や司法書士が訴訟代理人となる場合には、訴状はオンラインで提出しなければなりません。
2  訴状提出の他、各種期日(口頭弁論期日、弁論準備期日、証拠調期日など)の開催など、訴訟手続のかなり多くの部分がオンライン(ウェブ会議)で行うことができるようになります。
もっとも、証拠調期日(証人尋問)は、裁判所は果たしてウェブ会議で開催するでしょうか。不正(カンニングなど)を防ぐ方法がないので、特別な事情がなければ、裁判所はウェブ方式をあまり採用しないのでないかと推測します。
3  訴訟記録が電子化され、期日調書や判決書もデジタルデータとなります。それに伴い、訴訟記録の閲覧・複写も、オンラインで行うことになります。
これまで時に、膨大な訴訟記録を謄写するのに時間と費用を要することがあったものが合理化されることが期待されます。

以上

    リーガルトピックス/お知らせに関するご注意

    ※本編の記載内容については、誤りがないように細心の注意を払っておりますが、仮に貴社もしくはあなたが、本編の記載内容に従って行動したことにより何らかの損失を被ったとしても、当事務所は一切の責任を負うことができませんので、あらかじめご了解ください。
     また、本編に引用されている法令等は、更新日現在のものであり、その後の法令改廃等によって、変更されている可能性があります。
    ※仮に、貴社もしくはあなたの抱えている法律問題が、本編の記載内容と関係していても、本編の記載内容がそのまま貴社もしくはあなたの抱えている法律問題に対する回答となるとは限りません。個別具体的事情により大きく異なることがあります。貴社もしくはあなたの抱えている法律問題に対して解決をお求めである場合は、個別に弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。