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新型インフルエンザと労務管理-2   (弁護士 天野雄介)

従業員に新型インフルエンザに罹患した恐れがある場合や従業員の家族が新型インフルエンザに罹患し、行政機関や医師等の要請等がないまま、会社が自主的に従業員を休業させる場合にはどうなるでしょうか。
ここも同じように「債権者の責めに帰すべき事由」(民法536条2項)や「使用者の責に帰すべき事由」(労働基準法第26条)に該当するかという問題になります。
実はこの2つの規定は同じ意味か別の意味かで争いがあります。
判例上は後者の方が前者より広い、つまり休業手当の方が賃金を支払う場合より広いと解されていますが、同じ意味であるとの学説も有力です。
判例の基準によれば、「債権者の責めに帰すべき事由」は債権者の故意・過失やこれと信義則上同視される事由となりますので、新型インフルエンザに罹患した恐れがあることから休業させることは会社の故意・過失などとはいえないでしょうから、賃金の支払い義務はないといえるでしょう。
「使用者の責に帰すべき事由」はこれより広く、不可抗力を除く全ての場合といえますので、従業員の家族が罹患した場合に未だ罹患が確認されていない従業員を休業させることが不可避であるのかという、価値判断を含む困難な問題となります。
私見としては、新型インフルエンザは現在のところ弱毒性であり、罹患したとしても一般的には生命の危険までは発生しないこと、当該従業員を休業させることにより、会社の営業を円滑にするという意味では、当該従業員の犠牲によって会社の利益を図ることになるのであるから何らかの手当てをすべきという価値判断も考慮し、不可抗力とは言えず、休業手当は支給すべきであると考えます。
今後は新型インフルエンザの確定診断を行わないことも増加することも考慮し、従業員本人の罹患の恐れの場合と従業員家族の罹患の場合を分けて、後者の場合のみ休業手当を支給するというのも一つの判断となると思われます。
最終的には個々の状況に応じた会社の判断ということになりますが、休業手当については、不払いと判断された場合は罰則があり、付加金が付される可能性があることも考慮する必要があります。
そのため、事前に出来るだけ労使で話し合いを行い、有給休暇の利用や特別休暇制度を整えるなど何らかの対策をすることが望まれる問題です。

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