後見制度について (弁護士 松本史郎)
見は、今般の民法改正の対象とはなっていませんので、トピックスとはいえませんが、年々利用者が増加する我国の成年後見制度について、この機会に一般的な情報を提供しておきます。
1 成年後見、保佐、補助の制度趣旨
判断能力の不十分な人(未成年者を除く)を保護する制度
(1) 成年後見
保護者:成年後見人
(2) 保佐
保護者:保佐人
(3) 補助
保護者:補助人
2 後見案件の一般的手続きの流れ
※〈申立書類〉
(1) 本人の戸籍謄本(全部事項証明書)
(2) 本人の住民票又は戸籍附票
(3) 後見人候補者の住民票又は戸籍附票
(4) 本人の診断書(家庭裁判所が定める様式のもの)
(5) 本人の登記されていないことの証明書
(6) 本人の財産に関する資料等
ア 不動産登記事項証明書(未登記の場合は固定資産評価証明書)
イ 預貯金及び有価証券の残高がわかる書類(通帳写し、残高証明書)
〈費用〉
(1) 申立手数料
ア 収入印紙 800円分
イ 郵便切手 各家庭裁判所で定める額(数千円)
(2) 後見登記費用
収入印紙 2600円分
(3) 判断能力の有無・程度について、医師の鑑定が必要な場合には、家庭裁判所が必要に応じて定める鑑定費用(約10万円)
3 後見人、保佐人、補助人の権限等の一覧表
※1 開始審判のときは、職権で選任します。
※2 補助開始の審判は、同意権付与の審判又は代理権付与の審判とともにすることが必要です(民15条3項)。
※3 代理権付与の対象となる法律行為の例
① 財産管理に関する法律行為(預貯金の管理・払戻し、不動産その他重要な財産の処分、遺産分割、賃貸借契約の締結・解除等)
② 身上監護(生活又は療養看護)に関する法律行為(介護契約、施設入所契約、医療契約の締結等)
(これらの法律行為に関連する登記・供託の申請、要介護認定の申請等の公法上の行為を含む。)
※4 民法13条1項所定の行為
民法13条1項所定の行為の概要は、次のとおりです。
① 元本を領収し、又は利用すること(1号)
② 借財又は保証をすること(2号)
借財とは、金銭消費貸借契約により債務を負担するほか、取引通念上これに準ずる行為も含まれると解されている。
③ 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること(3号)
・抵当権の設定
・土地賃貸借の合意解除
④ 訴訟行為をすること(4号)
⑤ 贈与、和解又は仲裁合意をすること(5号)
贈与を受けることはOK
⑥ 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること(6号)
⑦ 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること(7号)
⑧ 新築、改築、増築又は大修繕をすること(8号)
⑨ 民法602条に定める期間を超える賃貸借をすること(9号)
・山林の賃貸借10年~
・山林以外の土地の賃貸借5年~
・建物の賃貸借3年~
・動産の賃貸借6か月~
以上