GLOBAL Law Office

  1. HOME
  2. リーガルトピックス
  3. 事業用定期借地権について  (弁護士 松本史郎)

リーガルトピックス

リーガルトピックス

事業用定期借地権について  (弁護士 松本史郎)

1 定期借地権
定期借地権とは
① 契約の更新をしない。
② 建物再築による期間延長をしない。
③ 期間満了による建物の買取り請求をしない
以上3点を本質とする借地権の類型です。
定期借地権では、賃貸借期間が満了したときに借地契約が終了し、地主から借地人へ立退料を支払うことなく、確実に貸した土地が戻ってきます。
定期借地権が導入される前は、建物所有目的で土地を貸せば半永久的に戻らないか、土地の返還を受けるために多額の立退料を支払わざるを得なかったため、未利用地を建物所有の目的で貸したいと思っても安心して貸すことができませんでした。しかし、定期借地権制度が導入されてからは、一定期間(賃貸借期間)が経過すれば、必ず貸した土地が返還されることになり、地主、借地人双方にとって、新しい土地利用の可能性が広がりました。

2 定期借地権の類型
定期借地権は、大別して次の2つの類型があります。
① 一般定期借地権
② 事業用定期借地権
①の一般定期借地権では、借地上に居住用の建物でも事業用の建物でも建てることが出来て、利用目的に制限はありませんが、借地期間は、50年以上と長期間が必要です。
これに対し、
②の事業用定期借地権では、借地上に事業用の建物(居住用建物はだめ)しか建てることができませんが、賃貸期間は10年以上50年未満の範囲で自由に定めることができます。
但し、事業用定期借地権の設定契約は、公正証書でしなければ効力が生じない、という要式性が要求される(一般定期借地権設定契約は公正証書でする必要はありません)ことに注意しなければなりません。

3 事業用定期借地権
平成4年に定期借地権の制度が借地借家法上創設されましたが、創設当初の事業用定期借地権の存続期間は「10年以上20年以下」でした。
しかし、平成20年の借地借家法の改正により、事業用借地権の期間が「10年以上50年未満」に延長されました。
以前(事業用定期借地権の期間が10年以上20年以下のとき)は、ロードサイド店舗、例えばコンビニ、スーパー、ファミレス、ゲームセンター、レンタルビデオショップ等の建築コストのあまりかからない軽微な建物を建てて、比較的短い事業期間で投下資本を回収しようとする事業者の店舗展開に事業用定期借地権が活用されました。しかし、最近では期間も10年以上50年未満と長くなったのと相まって、高齢化社会に対応して、医療、福祉、介護施設にも事業用定期借地権が活用されています。

4 事業用定期借地権を活用するメリット
事業用定期借地権は、定期借地権の本質である契約期間が満了すれば、立退料なしに土地の返還を受けることができるというメリットのほかに、一般定期借地権のように長期の拘束(50年以上)を受けないこと、最短10年で土地の返還を受けることができること、事業者(借地人)から得られる地代もかなりの水準が期待できること、土地そのものを貸すため投下資本が不要であること、未利用地にかかる固定資産税、都市計画税の負担(※)を地代収入で十分手当てできること、相続税節税対策にもなること、など多くのメリットがあります。
遊休地、未利用地の土地所有者は、事業用定期借地の利用をご検討されてはいかがでしょうか。

※〈固定資産税・都市計画税の負担〉
固定資産税と都市計画税(以下「固・都税」といいます)を併せた税率は、一般的には固定資産評価額の1.7%です。固定資産評価額は、公示価格(推定時価)の70%水準です。そうすると、当該土地にかかる年間の固・都税の税額は、土地の推定時価×70%×1.7%、つまり土地の推定時価の1.2%程度となります。仮に土地の時価が5000万円とすると、年間の固・都税は、約60万円(5000万円×1.2%)となります。未利用地は、それを持っているだけで、毎年60万円が流出していく負の資産ということになります。

以上

    リーガルトピックス/お知らせに関するご注意

    ※本編の記載内容については、誤りがないように細心の注意を払っておりますが、仮に貴社もしくはあなたが、本編の記載内容に従って行動したことにより何らかの損失を被ったとしても、当事務所は一切の責任を負うことができませんので、あらかじめご了解ください。
     また、本編に引用されている法令等は、更新日現在のものであり、その後の法令改廃等によって、変更されている可能性があります。
    ※仮に、貴社もしくはあなたの抱えている法律問題が、本編の記載内容と関係していても、本編の記載内容がそのまま貴社もしくはあなたの抱えている法律問題に対する回答となるとは限りません。個別具体的事情により大きく異なることがあります。貴社もしくはあなたの抱えている法律問題に対して解決をお求めである場合は、個別に弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。