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精神障害の労災認定について

弁護士 水口良一

平成26年4月11日更新

 最近、マスコミ等の報道でも明らかなように、過労自殺が社会問題となっています。
 また、過労自殺に関わらず、近年、仕事によるストレスが関係した精神障害に関する労災請求が増加しています。
 そこで、このような労災請求があった場合に、厚生労働省が労災認定の基準としている「心理的負荷による精神障害の認定基準」(平成23年12月版)の概要をご説明したいと考えます。


 精神障害は、外部からのストレスとそのストレスへの個人の対応力の強さとの関係で発病に至ると考えられています。
 そして発病した精神障害が労災認定されるのは、その発病が仕事による強いストレスが原因であると判断される場合となります。
 そこで、精神障害について労災認定を受けるためには、以下の3つの要件を満たすことが必要とされています。
@  認定基準の対象となる精神障害を発病していること
A  認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
B  業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと

「認定基準の対象となる精神障害」について
 認定基準の対象となる精神障害は、国際疾病分類第10回修正版(ICD−10)第V章「精神および行動の障害」に分類される精神障害であって、認知症や頭部外傷、アルコールや薬物による障害等は除かれます。
 業務に関連して発病する可能性のある精神障害の代表例としては、うつ病や急性ストレス反応などがあります。

「業務による強い心理的負荷」について
 上記認定基準においては、「業務による心理的負荷評価表」というものが定められています。そして、精神障害の発病前おおむね6か月の間におきた業務による出来事を評価表にあてはめ、「強」と評価された場合には、認定要件のAを満たすことになります。
 例えば、過労自殺等で問題となる長時間労働については、以下のような評価がなされています。
@ 発病直前に極めて長い長時間労働がなされていた場合、特別な出来事として心理的評価は「強」となります。
 例えば、発病直前の1か月におおむね160時間以上の時間外労働を行った場合や発病直前の3週間におおむね120時間以上の時間外労働を行った場合がこれにあたります。
A また、発病前の1か月から3か月間の長時間労働を出来事として評価し、例えば、発病直前の2か月間連続して1月当たりおおむね120時間以上の時間外労働を行なった場合や、3か月間連続して1月当たりおおむね100時間以上の時間外労働を行なった場合には、心理的評価は「強」として評価されます。
B さらに、出来事が発生した前や後に恒常的な長時間労働(月100時間程度の時間外労働)があった場合、心理的負荷の強度を修正する要素として評価されます。例えば、転勤して新たな業務に従事し、その後月100時間程度の時間外労働を行った場合には「強」として評価されます。
 なお、これらの時間外労働時間数は目安であり、この基準に至らない場合でも、心理的負荷を「強」と判断されることがあります。

 厚生労働省の労災認定の認定基準は以上のとおりですが、長時間労働については、精神障害発病の原因となるのみならず、脳や心臓疾患の原因になるとも言われています。
 経営者の方々は、従業員の健康やその家族の人生を守るためにも、長時間労働の弊害についても理解をしておく必要があると思います。
以上
                                                                    

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