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平成24年8月の労働契約法改正についての再確認(VOL.2)
弁護士 谷岡俊英
平成26年1月24日更新
前回に引き続き、平成24年8月10日公布、同25年5月1日施行の労働契約法の改正(有期労働契約の無期労働契約への転換)のご説明をさせていただきます。 今回は、無期転換申込の効果、今後に向けての就業規則等の整備の必要性についてです。 |
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5 無期転換申込の効果 | |||||
・ | 労働者が申込を行えば、使用者が承諾したものとみなされ、無期労働契約がその時点(申込時点)で成立することになります。もっとも、具体的に無期労働契約に転換されるのは、申込時の有期労働契約が終了する翌日からとされており、申込時点からではありません。 | ||||
・ | 無期労働契約の労働条件は、直前の有期労働契約と同一の条件とされています。 |
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【コメント】 | |||||
・ | 無期労働契約の成立は申込時点であるため、有期労働契約の満了をもって当該有期労働契約者との契約関係を終了させる場合には無期労働契約者を解雇する必要があり、当該解雇が労働契約法16条の要件を満たさない場合には権利濫用に該当するものとして無効となります。 | ||||
・ | 無期労働契約となったとしても、期間の定めが変更されるだけであり、その他の条件(賃金、職務、勤務地、労働時間)などは、変更する必要はありません。そのため、当該労働者を正社員として扱う必要もありません。 | ||||
・ | また、無期労働契約の労働条件は、労働協約、就業規則、個別の労働契約により変更することができます。 |
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6 今後に向けての就業規則等の整備の必要性 | |||||
本制度は、平成25年4月1日以降に締結または更新された有期労働契約が対象となるため、実際に労働者が転換の申込みが可能となるのは、平成30年4月1日以降です。 そのため、実際の運用はまだ先の話ですが、それまでに様々な法的整備を行っておかなければ、後の紛争の火種を残したままとなる可能性があります。 以下では、注意すべき点の一例をあげさせていただきます。 |
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1)定年の扱い | |||||
無期転換労働者について適用される就業規則について、無期転換前の就業規則(有期労働者用の就業規則)をそのまま適用するとした場合、同規則には定年の定めがないことが通常ですので、無期労働契約転換をした労働者のみ定年がなく働き続けることができることになる可能性があります。 そのため、無期転換労働者については別途就業規則等を整備しておくことが望ましいでしょう。 |
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2)正社員に適用される給与規程や労働契約等で無期転換労働者への適用除外や特別規定を設けていない場合 | |||||
この場合、正社員に適用される給与基準が無期転換労働者にも妥当し、正社員並みの給与を支払わなければならなくなったり、規程の内容によっては賞与や退職金の支給もしなければならなくなる可能性があります。 そのため、場合によっては、除外規定を設けた上で、無期転換労働者に対して適用される就業規則等を別途整備する必要があるでしょう。 |
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3)定年後再雇用との関係 | |||||
労働契約法18条には、一定年齢以上の労働者について適用除外とするような規定が設けられていないため、定年後の再雇用者にも適用があると考えられています。 そのため、理論上、仮に60歳定年で65歳まで1年契約を更新して65歳以降も雇用が継続されるとすると、65歳の時点において無期転換申込権が発生することになります。 そして、通常、高齢者に適用される嘱託規程等には定年の定めが設けられていないことが多いため、無期転換労働者のみ定年がなく働き続けることができることになる可能性があります。 そのため、この点についても別途就業規則等で整備をしておく必要があるでしょう。 |
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7 結語 | |||||
上記の就業規則等の整備の必要性の例はほんの一例です。 各企業、事業主様や業種等に応じた就業規則等の整備が必要ですので、ご相談いただければ対応させていただきます。また、労働者の方についても、会社の就業規則等について疑問がある場合もあると思いますので、ご相談いただければ対応させていただきます。まずはお気軽にご相談ください。 |
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以上 |