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違法ダウンロードの刑罰化(改正著作権法)が施行されました
弁護士 中村美絵
平成24年10月15日更新
「著作権法の一部を改正する法律」が、平成24年6月20日に成立し、同月27日に公布されました。そして、改正著作権法のうち、違法ダウンロードの刑罰化に係る規定が、平成24年10月1日から施行されています。 |
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違法ダウンロードの刑罰化とは、「私的使用の目的をもって、有償著作物等の著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、自らその事実を知りながら行って著作権又は著作隣接権を侵害する行為」、つまり、違法にアップロードされた有償の音楽・映像を違法と知りながらダウンロードする行為について、2年以下の懲役または200万円以下の罰金、あるいはその双方が科せられるというものです。 |
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平成21年の著作権法改正においても、違法にアップロードされた音楽・映像を違法と知りながらダウンロードする行為については、私的使用目的の複製の範囲外とされ、違法とされていましたが、罰則は設けられていませんでした。 しかし、平成21年の著作権法改正後も、違法ファイル等の年間ダウンロード数は推定で43.6億ファイル(正規有料音楽配信の10倍に相当)、販売価格に換算すると6,683億円にもなる(日本レコード協会調べ)として、レコード業界などが違法ダウンロードによって大きな損害を被っていると主張しており、依然として違法な音楽等の流通量は減少せず、コンテンツ産業に大きな被害が生じていました。 そのため、今回の改正では、違法ダウンロードに刑罰を科すことになりました。 |
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では、具体的にどのような場合に刑罰を科されることになるのでしょうか。一部ですが、以下に紹介します。 詳細については、文化庁のサイト「違法ダウンロードの刑事罰化についてのQ&A」に解説されていますのでご確認ください。 |
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@ | 対象となるのは、「有償著作物等」といって、店頭やネット上で有料販売されている音楽、映画などです。したがって、テレビで放送されただけで、有償で提供・提示されていない番組は、有償著作物等には当たりません。 |
A | 違法に配信されている音楽や映像を視聴するだけでは、録音又は録画を伴わないため、違法ではなく、刑罰の対象にもなりません。 また、故意犯のみを処罰の対象としているため、違法に配信されている音楽や映像であることを知らなかった場合には、刑罰の対象となりません。 違法なサイトかどうかを区別するには日本レコード協会が発行する「エルマーク」の認証表示が目安になります。 なお、この刑罰は親告罪(第123条)とされているため、権利者からの告訴がなければ公訴提起はできません。 |
B | 「You Tube」などの動画投稿サイトでストリーミング(逐次再生)と呼ばれる方式で視聴する行為については、違法ではなく、刑罰の対象とはなりません。 |
今回の著作権法改正は、多くのインターネット利用者に関係するものですので、注意が必要です。 違法ダウンロードの刑罰化については、自由なインターネット利用が侵害されるとの否定的な見解や、著作権者にとってはこれまで自ら著作権を守るために自主的に厳しい制限をしていたが、今後は利用者の利便性を高める環境づくり(例えば、コピー制限の廃止など)に動き出すことができるとの肯定的な見解があります。 違法ダウンロードの刑罰化の規定は、今月施行されたばかりですので、今後の動向にも注目すべきです。 |
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【参考条文】著作権法 | |
第119条第3項 | |
第三十条第一項に定める私的使用の目的をもつて、有償著作物等(録音され、又は録画された著作物又は実演等(著作権又は著作隣接権の目的となつているものに限る。)であつて、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)をいう。)の著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権又は著作隣接権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、自らその事実を知りながら行つて著作権又は著作隣接権を侵害した者は、二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。 |
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第123条 | |
第百十九条、第百二十条の二第三号及び第四号、第百二十一条の二並びに前条第一項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。 |