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家事事件手続法について

弁護士 中村美絵

平成24年10月1日更新

 新しい家事事件手続法が、平成25年1月1日から施行されます。
 家事事件手続法とは、家事審判および家事調停に関する事件の手続きについて定められた法律です。

1 家事事件手続法制定の経緯
 家事事件の手続については、これまで家事審判法や家事審判規則及び特別家事審判規則により定められていました。
 しかし、家事審判法は昭和22年に制定された法律で、条文も少なく、不十分なものでした。また、重要な規定の多くが法律ではなく規則に定められていたということが問題点として指摘されていました。
 このような背景から、家事事件の手続をより利用しやすく、現代社会に適合した内容のものとするために、家事審判法が全面的に見直され、家事手続の基本に関する規定を整備し、当事者の手続保障を図る為の制度の充実、利便性の向上を図るための制度の創設・見直しがなされ、新しい家事事件手続法が制定されました。

2 制度の紹介
 具体的にどのような制度が制定されたのかについて、いくつか紹介します。
 まず、当事者の手続保障を図る為の制度としては、以下のような制度が制定されました。
 @ 参加制度の拡充(41条、42条)
   従前の制度では、手続に参加することのできる人の範囲や参加人の権限等が不明確でしたが、家事事件手続法においては、裁判の結果に利害関係を有する人が家事審判や家事調停の手続に主体的に関与できるように、手続に参加することのできる人の範囲や権限が明確に規定されました。

A 記録の閲覧(47条)  
   従前の制度では、記録の閲覧等をすることが出来るか否かについては裁判所の裁量に委ねられており、不明確でした。しかし、家事事件手続法においては、当事者が家事審判事件について記録の閲覧等を求めた際には、原則としてこれを認めることとし、関係者のプライバシー等に配慮すべき場合についてのみ例外的に閲覧等を許可しないことが定められました。

B 主張立証の期限や審判日の指定(71条、72条)  
   従前の制度では、主張・立証の期限や審判がされる日が不明確でしたが、家事事件手続法においては、一定の事件については、予め、主張・立証の期限及び審判の日を定めることで、当事者の予測可能性が確保されることになりました。
 
また、手続きを利用しやすくするための制度としては、以下のような制度があります。
C 電話会議・テレビ会議システムの導入(54条)  
   従前の制度では、遠隔地に居住している人も、裁判所に出頭しなければならず、負担が大きかったのですが、家事事件手続法では、電話会議システムやテレビ会議システムが導入されたため、裁判所に出頭しなくても電話等で手続に参加することが可能になりました。

D 高等裁判所における調停制度(274条)、電話会議システム等を利用した調停制度(258条)等の、調停を成立させる方法
 の拡充  
   従前の制度では、調停を成立させる方法が限られていましたが、家事事件手続法では、調停を成立させる方法が多様になりました。
 例えば、高等裁判所においても調停を行うことが出来たり、離婚や離縁の場合を除いて、調停条項案の書面による受諾の方法や電話会議システム等を利用して調停を成立させることができることになりました。

 家事事件手続法は、いよいよ来年1月から施行されます。
 家事事件手続法の施行に伴い、市民がより家庭裁判所における手続きを利用しやすくなり、家庭内における紛争の解決が図られることを期待したいものです。
 以上
                                                                    

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