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公益通報者保護法の今後の検討課題
弁護士 東重彦
令和7年2月3日更新
平成の中頃、食品偽装事件やリコール隠し事件等の企業不祥事がありましたが、これら不祥事を明らかにした契機の多くは、企業内部の関係者による外部通報でした。しかし、これら通報を行った関係者に対しては解雇、懲戒、嫌がらせといった不利益取り扱いがなされることがしばしばでもありました。そのため、どのような内容の通報をどこへ行えばこのような不利益取扱いから保護されるのかを明確化する等のために、平成16年6月に公益通報者保護法が制定されました。 その後、所管する消費者庁は、公益通報を受け付けた場合の適切な対応についてガイドラインを策定する等の対応をしてきましたが、いわゆる内部通報制度が十分に機能しない事案も発生したほか、同法の適用範囲が狭く、保護要件も厳しすぎる等の指摘があり、令和2年6月、制度の実効性を高めるべく同法は改正されました。
改正点は大きくは3点あり、①内部通報に適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置をとる義務を課したこと、②外部への公益通報である2号及び3号に定める通報の保護要件を緩和したこと、③保護される公益通報者の対象を拡大し、公益通報に伴う損賠賠償責任の免除規定を追加したこと、が挙げられています。
ただ、この改正で積み残した論点については、改正後3年間を目途として施行状況を勘案し、検討を加え、必要な措置を講じることとされました。
そのための組織として有識者による「公益通報者保護制度検討会」が設置され、令和6年5月から7月に3回開催された後、同年9月2日に「中間論点整理」が公表されました。
同整理においては、①事業者における体制整備の徹底と実効性の向上に関しての検討、②公益通報を阻害する要因への対処に関しての検討、③公益通報を理由とする不利益取り扱い(報復)の抑制・救済に関する検討、等がなされています。
同検討会では、今年度中の取りまとめを予定しており、結果の公表が待たれます。
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