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代表取締役等住所非表示措置(令和6年10月1日施行)について

弁護士 中村美絵

令和6年9月4日更新

 令和6年10月1日から、「代表取締役等住所非表示措置」という制度がスタートします。
同制度は、商業登記規則等の一部を改正する省令(令和6年法務省令第28号)によって創設された制度であり、一定の要件の下、株式会社の代表取締役、代表執行役又は代表清算人(以下「代表取締役等」といいます。)の住所の一部を登記事項証明書や登記事項要約書、登記情報提供サービスに表示しないこととする措置です。
現行の商業登記制度においては、代表取締役等の氏名や住所は登記事項とされています。(会社法第911条3項14号、22号ハ、928条1項2号)。
これについて、代表取締役等の個人情報、プライバシー保護や起業促進の観点から、同制度の妥当性が議論され、法務省において、株式会社の代表取締役等の住所の一部を登記事項証明書等に表示しないこととする制度が創設されました。
以下、代表取締役等住所非表示措置の概要と留意点についてご説明いたします。
 なお、制度の詳細については、法務省のホームページ(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00210.html#4)もご参照ください。

第1 代表取締役等住所非表示措置の概要
●代表取締役等住所非表示措置の要件 
 1 登記申請と同時に申し出ること
 2 所定の書面を添付すること
  →上場会社である株式会社の場合
   株式会社の株式が上場されていることを認めるに足りる書面。ただしすでに代表取締役等住所非表示措置が講じられている場合は添付不要。
 →上場会社以外の株式会社の場合 
  以下の(1)から(3)までの書面
なお、既に代表取締役等住所非表示措置が講じられている場合は、(2)のみの添付で足りる。
(1)   株式会社が受取人として記載された書面がその本店の所在場所に宛てて配達証明郵便により送付されたことを証する書面等   
(2)  代表取締役等の氏名及び住所が記載されている市町村長等による証明書
(3)  株式会社の実質的支配者の本人特定事項を証する書面

●代表取締役等住所非表示措置が講じられた場合の登記事項の表示 
 登記事項証明書等において、代表取締役等の住所は最少行政区画(市区町村まで。東京都においては特別区まで、指定都市においては区まで)までしか記載されないことになります。
(例:東京都〇〇区、大阪市〇〇区)

●代表取締役等住所非表示措置の終了
 以下の場合においては、登記官が職権で代表取締役等住所非表示措置を終了させることとなります。
1 代表取締役等住所非表示措置を希望しない旨の申出があった場合
2 株式会社の本店所在場所における実在性が認められない場合
3 上場会社でなくなったと認められる場合
   ただし、株式譲渡制限の定款の定めの設定の登記と同時に改めて代表取締役等住所非表示措置の申出があった場合には、引き続き代表取締役等住所非表示措置が講じられます。
4  閉鎖された登記記録について復活すべき事由があると認められる場合
  (清算結了の登記を行い閉鎖されたものの清算が未了の財産があることが明らかとなった場合などにおいては、代表取締役等住所非表示措置が終了となります。)

第2 留意点
 ・  代表取締役等住所非表示措置をとるには、申出が必要となります。申出なく一律に非表示にする制度ではないことに注意が必要です。
 株式会社以外の法人は、代表取締役等住所非表示措置の対象になりません。
 代表取締役等住所非表示措置の申出は、登記を申請する際に同時に行う必要があるとされています。そのため、既に住所が登記されている代表取締役等が、登記申請とは無関係に本措置の申出のみを行うことは認められていません。
 代表取締役等住所非表示措置が講じられた場合であっても、会社法(平成17年法律第86号)に規定する登記義務が免除されるわけではないため、代表取締役等の住所に変更が生じた場合には、その旨の登記の申請をする必要があります。また、登記の申請書には代表取締役住所を記載する必要があるため、登記されている住所について失念することのないよう注意が必要です。
 代表取締役等住所非表示措置が講じられた場合には、登記事項証明書等によって会社代表者の住所を証明することができないこととなるため、金融機関から融資を受けるに当たって不都合が生じたり、不動産取引等に当たって必要な書類(会社の印鑑証明書等)が増えたりするなど、一定の影響が生じることが想定されます。

第3 まとめ
 
 この度導入された代表取締役等住所非表示措置により、代表取締役等の個人情報・プライバシーの保護につながり、起業が促進されることが期待されます。
 一方で、同措置が利用できる場面は限られていることや、取引相手との関係で必要な書類が増えたりするなど、一定の影響が生じることが想定されています。
 そのため、代表取締役等住所非表示措置の申出をする前に、今回ご説明した留意点や影響があり得ることについて、慎重かつ十分な検討をすることが望まれます。
 
以上 
                                                                    

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