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障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の促進に関する法律)への対応

弁護士 村上智裕

令和6年8月1日更新

 障害者差別解消法とは、障害のある人(身体障害、知的障害、精神障害、その他の心身の機能の障害があるかた)に対する差別を解消するための法律です。
 同法は、本年4月、これまで民間事業者には“努力義務”とされてきた「合理的配慮の提供」を“法的義務”に格上げしました。
 「合理的配慮」とは、障害のある人から、社会の中にあるバリアを取り除くために何らかの対応を必要としているとの意思が伝えられたときに、負担が重すぎない範囲で対応することが求められるものです。
 例えば、飲食店で障害のある人から「車椅子のまま着席したい」との申し出があったとき、机に備え付けの椅子を片付けて、車椅子のまま着席できるスペースを確保する、障害のある人から「難聴のため筆談によるコミュニケーションを希望しているが、弱視でもあるため細いペンで書いた文字や小さな文字は読みづらい」との申し出があったとき、太いペンで大きな文字を書いて筆談を行う、などが「合理的配慮」と考えられています。
 障害者差別解消法8条は以下のように規程されています。

  (事業者における障害を理由とする差別の禁止)   
 第 八条 事業者は、その事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。
2 事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。
 
 このように、事業者は、障害者から合理的配慮を求められた場合、合理的配慮をすることが過重な負担でないときは、かかる対応をすることが義務付けられました。

 内閣府のリーフレット(合理的配慮リーフレット (cao.go.jp))によれば、「合理的配慮」は、事務・事業の目的・内容・機能に照らし、以下の3つを満たすものであることに留意する必要があるとされています。
  ①  必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること 
②  障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること
③  事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないこと

 一方、「過重な負担」の有無については、個別の事案ごとに、以下の要素等を考慮し、具体的場 面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要とされています。
  ④  事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か)
⑤  実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)
⑥  費用・負担の程度
⑦  事務・事業規模
⑧  財政・財務状況

同リーフレットでは、合理的配慮の提供に当たっては、障害のある人と事業者等との間の「建設的対話」を通じて相互理解を深め、共に対応案を検討していくことが重要だと言及されています。
 障害のある人から対応を求められるシチュエーションとなった場合には、まずは対話をするところからはじめる必要があります。対話において、事業者も自身の都合を述べることは当然に認められます。対話をすることで共通理解をもつことが重要です。
 一方で、対話を一方的に拒むことはそれ自体で合理的配慮の提供義務違反となる可能性があり、事業者には真摯な姿勢が求められます。
以上 
                                                                    

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