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借地借家法の適用について

弁護士 田中素樹

令和6年7月1日更新

1 そもそも、借地借家法とは?
   借地借家法は、建物所有を目的とする土地の利用関係を長期にわたって安定的に維持するために設けられており、賃借人を保護する法律です。
 借地借家法が適用されると、契約期間、解約、契約の更新などについて、民法とは異なる規定が適用されます(詳細は本稿では割愛します)。これらは強行規定であり、賃借人に不利な規定を設けても無効とされます。
 今回は、どのような場合に借地借家法が適用されるかについて、整理したいと思います。
 借地借家法が適用されるためには、「建物所有の目的」が認められる必要があるので、以下では「建物所有の目的」の意義や具体的判例についてご紹介します。

2 「建物所有の目的」該当性 
 
(1) 「建物」とは? 
     「建物所有の目的」が認められるための前提として、土地上の建造物が「建物」にあたる必要があります。
 この点、借地借家法にいう「建物」とは、土地に接着した施設物で、住居、営業、物の貯蔵等の目的に使用される独立性のある建造物であるといわれています。
 住居、店舗、事務所等がこれに当たります。
 一方で、上方を雨がかからない程度にトタンで覆ったにすぎない車庫は、建物に当たらないとした判例があります(東京地判昭和43年10月23日判時552号59頁)。独立性が認められるためには、最低限、周囲が囲われていることが求められそうです。

(2) 「建物所有の目的」が認められるか 
  ア 判断基準
    建造物が建物であったとして、それでは、いかなる場合に「建物所有の目的」が認められるでしょうか。
 この点、「建物所有の目的」とは、借地人が借地上に建物を所有する場合において、当該建物の所有が、借地使用の主目的である場合をいうとされています。すなわち、当該建物の所有が、従たる目的にすぎない場合には、建物所有の目的とはいえません。
 イ 肯定例
   建物の所有が借地使用の主目的であると認定された例として、自動車運転教習所が挙げられます。自動車運転教習所は、教習コースと、校舎や事務室等から成り立っていますが、自動車学校においては、両者が一体となって初めてその経営の目的を達することが可能であるから、両者に主従の区別はなく、借地全体について借地借家法の適用があるとされています(最判昭和58年9月9日判時1092号59頁)。
 また、最高裁判例においては、概要、複数の土地が社会通念上相互に密接に関連する一体として利用されている場合においては、双方における土地の利用の必要性ないし土地を利用することができないことによる損失の程度、土地の利用状況に関する貸主の認識の有無や貸主が明渡請求をするに至った経緯等を考慮すべき、と判示されています(最判平成9年7月1日民集51巻6号2251頁)。この判例に従うと、スーパーマーケットとこれに附属する駐車場を借地とした場合等にも、双方の土地に借地借家法の適用があると考えられます。
ウ 否定例 
   一方で、ゴルフ練習場の事務所用建物や、駐車場に車両管理のための事務所を設けた場合などは、これらはいずれも当該施設の従たる目的に過ぎないとして、借地借家法の適用が否定されています(最判昭和42年12月5日民集21巻10号2545頁、東京地判昭和45年2月26日判タ251号298頁)。
 また、先ほど自動車運転教習所に関する肯定例をご紹介しましたが、別の自動車運転教習所に関する事案で、建物が物置、車庫、事務所用の3棟で土台もなく、その面積も1200坪のうち20坪程度であったというケースでは、当該建物は付随的に設置されたものにすぎないとして、借地借家法の適用が否定されています(最判昭和35年6月9日最判集民事42号187頁)。

3 最後に 
   このように、「建物所有の目的」が認められるか否かは、最高裁まで争われることもあり、非常に判断の難しい問題です。住居や平面駐車場であれば比較的容易に判断可能ですが、同じ自動車運転教習所であってもその個別事情によって判断が分かれており、ご自身が関わっている土地賃貸借について借地借家法の適用の有無が判断できない地主や借地人の方もおられるかと思います。
 そのような場面に出くわした場合は、ぜひ弁護士にご相談ください。

以上 
                                                                    

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