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電動キックボード等に関する改正道路交通法の施行について

弁護士 中村美絵

令和5年8月1日更新

 令和5年7月1日から、電動キックボード等に関する改正道路交通法が施行されました。
改正前は、電動キックボードは原動機付自転車(原付バイク)又は自動車と同様の扱いであったため、運転免許が必要でしたが、改正後は、一定の基準に該当する電動キックボード等について、原動機付き自転車の一類型である「特定小型原動機付自転車」となり、16歳以上であれば、運転免許が無くても運転ができるようになるなど、新しい交通ルールが適用されることになりました。
一定の基準に該当する電動キックボード(特定小型原動機付自転車)とはどのようなものか、運転するときの新しい交通ルール、その他注意点等をご紹介いたします。

《特定小型原動機付自転車とは》
 次の基準を全て満たすものをいいます。
  ・車体の大きさは、長さ190センチメートル以下、幅60センチメートル以下であること
・原動機として、定格出力が0.60キロワット以下の電動機を用いること
・時速20キロメートルを超えて加速することができない構造であること
・走行中に最高速度の設定を変更することができないこと
・オートマチック・トランスミッション(AT)であること
・最高速度表示灯(灯火が緑色で、点灯又は点滅するもの)が備えられていること

これらの基準を満たさない電動キックボードは、令和5年7月1日以降も引き続き一般原動機付自転車や自動車に該当するため、運転免許が必要になることにご注意ください。

 また、上記に加え、
  ・道路運送車両法上の保安基準に適合していること
・自動車損害賠償責任保険等に加入していること
・標識(ナンバープレート)を取り付けていること
が必要となります。
ヘルメットの着用については努力義務となっています。

《特定小型原動機付自転車に関する規制及び運転する際の主な交通ルールについて》
  ●運転手の年齢制限 
     特定小型原動機付自転車を運転する際に、運転免許は不要ですが、16歳未満の者が運転することは禁止されています。また、16歳未満の者に特定小型原動機付自転車を提供することも禁止されています。

  ●飲酒運転の禁止 
     飲酒運転は禁止されています。また、飲酒運転をする恐れがある人に特定小型原動機付自転車を貸したり、酒類の提供や勧めたりすることも禁止されています。

  ●車道通行の原則 
     車道と歩道又は路側帯の区別のある所では、車道を通行しなければなりません(自動車道を通行することはできます。)。道路では、原則として左端側に寄って通行しなければならず、右側を通行してはいけません。
 なお、特例特定小型原動機付自転車の基準を全て満たす場合に限り、歩道を通行することができます。通行することが出来る歩道はすべての歩道ではなく、「普通自転車等及び歩行者等専用」の道路標識が設置されている歩道に限られます。
    特例特定小型原動機付自転車の基準】
   
 ・  歩道などを通行する間、最高速度表示灯を点滅させていること。
 ・ 最高速度表示灯を点滅させている間は、車体の構造上、時速6キロメートルを超える速度を出すことができないものであること。
 ・ 側車を付けていないこと。
 ・ ブレーキが走行中容易に操作できる位置にあること。
 ・ 鋭い突出部のないこと。

  その他、歩行者の優先、車両用の信号に従う義務、スマートフォン等を通話のために使用したり、その画面に表示された画像を注視したりしながら運転してはいけない等のルールがあります。

《交通事故が起きた場合》
 警察庁によりますと、令和2年から令和5年1月までの間に、電動キックボードに関連する交通事故件数は76件あり、1人が亡くなり、78人が負傷しています。
交通事故が起きた時は、負傷者を救護したり、直ちに警察官に交通事故について報告したりしなければなりません。
 また、電動キックボードを運転していて交通事故を起こし、他人の身体に怪我をさせたり、他人の車両や持ち物を壊したりした場合等には、被害者に対し、治療費、慰謝料、修理費等の様々な損害を賠償しなければなりません。
 特定小型原動機付自転車は、自賠責保険の加入が義務付けられていますが、自賠責保険ではカバーできない高額な損害賠償責任を負う可能性もありますので、任意保険に加入しておくことをおすすめします。

《最後に》
 今回の法改正を機に、電動キックボードの利用者は増えることが予想されます。
電動キックボードを利用する際には、交通事故に遭わない(起こさない)ためにも、今回紹介した交通ルール等をしっかり確認し、安全な運転を心がけたいものです。
電動キックボードに関する交通事故の事例はこれから蓄積されていくことになると思いますが、もし交通事故に遭われた場合は、これまでの自動車やバイク、自転車に関する交通事故の紛争処理と同様に、専門家である弁護士にご相談ください。

以上 
                                                                    

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