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~相隣関係の法改正について~

弁護士 田中素樹

令和5年6月1日更新

 令和5年4月から、相隣関係に関する民法の規定が一部改正されましたので、ご紹介します。

(旧民法209条)
 土地の所有者は、境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる。ただし、隣人の承諾がなければ、その住家に立ち入ることはできない。

2   前項の場合において、隣人が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。

 この規定には、①「隣地の使用を請求することができる」の具体的な意味が判然とせず、隣地所有者が所在不明である場合等では特に対応が困難である、②障壁・建物の築造・修繕以外の目的で隣地を使用することができるかどうかが不明確で、土地の利用・処分を阻害している、といった問題点がありました。
 実際に、あくまで隣地の使用を請求する権利が定められているにすぎないことから、隣人の承諾を得ることができない場合には、裁判所に訴えて承諾に代わる判決を求めなければならないという運用が取られており、多大な時間と労力を要するため非常に使い勝手の悪い規定となっていました。
 そこで、同条は次のとおり改正されました。

 (新民法209条)
 土地の所有者は、次に掲げる目的のため必要な範囲内で、隣地を使用することができる。ただし、住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることはできない。
一 境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕
二 境界標の調査又は境界に関する測量
三 第二百三十三条第三項の規定による枝の切取り

 前項の場合には、使用の日時、場所及び方法は、隣地の所有者及び隣地を現に使用している者(以下この条において「隣地使用者」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。

3   第一項の規定により隣地を使用する者は、あらかじめ、その目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び隣地使用者に通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足りる。

 第一項の場合において、隣地の所有者又は隣地使用者が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。

 これにより、隣地使用が認められる目的が拡充・明確化されました。そして、隣地使用者のために損害が最も少ない方法で、かつ目的・日時・場所及び方法を通知した場合は、隣地が住家の場合を除き、承諾に代わる判決を得ることなく隣地を使用することができるようになりました。

 同条項の実務上の運用については、今後の裁判例の動向等を引き続き見守る必要がありますが、以前までの問題点は解消される方向で進んでいるとみることができるでしょう。

以上 
                                                                    

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