ホーム > リーガルトピックス >令和5年>賃金のデジタル払いについて
賃金のデジタル払いについて
弁護士 水口良一
令和5年2月1日更新
労働基準法第24条第1項では、賃金は、原則、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならないとされており、労働者が同意した場合には、その例外として、①銀行口座等と②証券総合口座への賃金支払が認められています(労働基準法施行規則第7条の2)。
しかしながら、キャッシュレス決済の普及や送金サービスの多様化が進む中で、資金移動業者の口座への資金移動を給与受取に活用するニーズも一定程度見られるという理由から、労働者の同意を得た上で、一定の要件を満たした場合には、労働者の資金移動業者の口座への賃金支払(いわゆる賃金のデジタル払い)が可能となりました。
なお、賃金のデジタル払いは、賃金の支払・受取の選択肢の1つであり、労働者が希望しない場合は賃金のデジタル払いを選択する必要はなく、使用者も希望しない労働者に賃金のデジタル払いを強制することはできません。
なお、賃金の一部を資金移動業者口座で受け取り、残りを銀行口座等で受け取ることも可能となります。
また、この制度をいつから利用できるのかということですが、以下の⑴~⑷の手続きを踏むことが予定されています。 |
|
(1) |
令和5年4月1日から資金移動業者が厚生労働大臣に指定申請を行うことができます。 |
|
(2) |
申請を受け付けた後、厚生労働省で審査を行い、基準を満たしている場合にはその事業者を指定します。この審査には、数か月かかることが見込まれています。 |
|
(3) |
その後、各事業場で、賃金のデジタル払いを行う場合には、利用する指定資金移動業者などを内容とする労使協定を締結する必要があります。 |
|
(4) |
その上で、労働者は賃金のデジタル払いの留意事項等の説明を聞き、理解した上で、賃金のデジタル払いを希望する場合には、使用者に同意書を提出することが必要となります。この同意書に記載する支払開始希望時期以降、賃金を資金移動業者の口座で受け取ることができるようになります。
|
|
以上 |
|