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宗教法人法の基礎知識

弁護士 東重彦

令和4年12月1日更新

 令和4年7月8日、奈良市において選挙の応援演説中の安倍晋三元内閣総理大臣が銃により襲撃され死亡しました。襲撃の動機は宗教法人「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」による悪質な活動に対する恨みにあったとのことでした。このような悪質な活動を行う宗教法人に対する宗教法人法上の解散命令の請求の可否が検討され、その前提として解散事由の存否を調査するための質問権の行使について文部科学省が検討しています。
質問権の行使、解散命令の請求、裁判所の判断といった各段階において、憲法によって保障される信教の自由との関係が問題となり慎重な判断が求められます。
今回は、株式会社等とは異なり日常的には馴染みが薄いと思われる宗教法人について、その運営管理を定める宗教法人法の基礎的な知識をご説明することとします。

1 宗教法人法(以下「法」といいます。)の目的
   宗教法人と宗教団体は同じではないことは言うまでもありません。法1条は「宗教団体が、礼拝の施設その他の財産を所有し、これを維持運用し、その他その目的達成のための業務及び事業を運営することに資するため、宗教団体に法律上の能力を与える」と定めています。簡単に言えば、宗教団体に経済活動能力についての法的な裏付けを与えるものと言えます。

2 宗教法人法の構成と概要 
   法は、第1章(総則)、第2章(設立)、第3章(管理)、第4章(規則の変更)、第5章(合併)、第6章(解散)第7章(登記)、第8章(宗教法人審議会)、第9章(補則)、第10章(罰則)からなります。因みに前述の質問権に関する規定は平成8年の改正により第9章に規定されました。
以下、主たる規定について概要を説明いたします。
   ① 設立
 宗教法人は、規則を作成し、設立の公告をなし、所轄庁による規則の認証を受け、主たる事務所所在地において設立登記をすることにより成立します。ただ、実際には設立の目的が税制上の優遇措置を受けることだけにあると思われる濫用的設立の意図がうかがわれる場合があり、所轄庁の判断は慎重であるようです。
② 代表役員・責任役員 
   宗教法人には、3人以上の責任役員(うち1人が互選により代表役員)が置かれ、宗教法人の事務を行います。
③ 財産管理・情報公開 
   宗教法人においては、一定の重要な財産的行為については、規則に定めるほか少なくとも1か月前に信者その他の利害関係人に対しその行為の要旨を公告する必要があります。これに違反した行為は原則無効となります。また、宗教法人の事務所には一定の重要な書類や帳簿を備置することとされています。
④ 合併・解散 
   会社等の法人とほぼ同じと理解して構いません。前述の解散命令による解散は法定解散の一つであり、裁判所が一定の事由があると認めた場合に所轄庁等の請求により又は職権で命ずるものです。
⑤ 登記 
   会社等の法人とほぼ同じと理解して構いません。設立、登記事項の変更、合併、解散、清算決了の際には登記が必要となります。
以上 
                                                                    

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