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リーガルトピックス(Legal topics)

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後見制度について

弁護士 松本史郎

令和2年7月1日更新

 後見は、今般の民法改正の対象とはなっていませんので、トピックスとはいえませんが、年々利用者が増加する我国の成年後見制度について、この機会に一般的な情報を提供しておきます。

 
1 成年後見、保佐、補助の制度趣旨
  判断能力の不十分な人(未成年者を除く)を保護する制度
 (1)   成年後見
   保護者:成年後見人
 (2)  保佐
   保護者:保佐人
 (3)   補助
   保護者:補助人

2 後見案件の一般的手続きの流れ

  ① 後見開始申立て
 ・ 申立人は、最寄の家庭裁判所に対し、書面によって申立てをしなければなりません。
 ・ 申立書類(※)は後記のとおりです。申立書類をまず申立てられた家庭裁判所が形式的にチェックします。
   ② 審  理   
 ・  家庭裁判所は、アないしオの手続によって、本人の判断能力がどのような状況(重度か軽度か)にあるかどうか、後見人を誰にするかについて審理します。
  ア 申立書類の審査
イ 申立人、候補者との面接
ウ 調査官調査
エ 鑑定
オ 親族照会
     ③ 審  判
家庭裁判所の裁判官の審判(決定)によって、後見の開始や後見人を誰にするかが決まります。


    ④ 審判確定  



   ⑤ 後見登記
  家庭裁判所から法務局に登記嘱託を行ないます。
(保佐、補助の場合も登記嘱託をします)

  ⑥ 初回財産目録、収支予定の作成
後見人は家庭裁判所に財産目録、収支予定、資料を提出します。


  ⑦ 家庭裁判所による後見監督
 ・ 家庭裁判所はいつでも後見人に対し財産目録等の提出を求め、後見事務と被後見人の財産の状況を調査することができます。

   ⑧ 財産目録等の作成
  後見人は家庭裁判所に財産目録、資料を提出しなければなりません。

※〈申立書類〉
  (1)  本人の戸籍謄本(全部事項証明書) 
  (2)  本人の住民票又は戸籍附票 
  (3)  後見人候補者の住民票又は戸籍附票 
  (4)  本人の診断書(家庭裁判所が定める様式のもの)
  (5)  本人の登記されていないことの証明書
  (6)  本人の財産に関する資料等
   
 ア  不動産登記事項証明書(未登記の場合は固定資産評価証明書)
 イ  預貯金及び有価証券の残高がわかる書類(通帳写し、残高証明書) 
     
   〈費用〉 
  (1)  申立手数料
   
 ア  収入印紙 800円分 
 イ  郵便切手 各家庭裁判所で定める額(数千円) 
  (2)  後見登記費用
     収入印紙 2600円分
  (3)  判断能力の有無・程度について、医師の鑑定が必要な場合には、家庭裁判所が必要に応じて定める鑑定費用(約10万円)

3 後見人、保佐人、補助人の権限等の一覧表

  後見開始の審判 保佐開始の審判 補助開始の審判
対象者   判断能力 精神上の障害(認知症・知的障害・精神障害等)により事理弁識能力を欠く常況にある人(民7) 精神上の障害により事理弁識能力が著しく不十分な人(民11) 精神上の障害により事理弁識能力が不十分な人(民15)
 機関の
名称 
保護者※1   後見人
(民8・843)
 保佐人
(民12・876の2)
補助人
(民16・876の7)
監督人  成年後見監督人
(民849の2) 
 保佐監督人
(民876の3)
 補助監督人
(民876の8)
同意権

 取消権   
付与の対象   日常生活に関する行為以外のすべての行為  民法13条1項各号所定の行為※4
(民13Ⅰ、「特定の法律行為」付与→民13Ⅱ)
 申立ての範囲内で家庭裁判所が定める「特定の法律行為」(民17Ⅰ)
付与の手続   後見開始の審判
(同意権はない)
 保佐開始の審判  補助開始の審判+同意権付与の審判※2
 審判についての
本人の同意
 不 要  不 要  必 要
(民17Ⅱ)
 取消権者 本人・後見人
(民120) 
本人・保佐人
(民120) 
 本人・補助人
(民120)
代理権    付与の対象 財産に関するすべての法律行為(民859)   申立ての範囲内で家庭裁判所が定める「特定の法律行為」※3
(民876の4Ⅰ)
 申立ての範囲内で家庭裁判所が定める「特定の法律行為」※3
(民876の9Ⅰ)
付与の手続  後見開始の審判   保佐開始の審判+代理権付与の審判
 補助開始の審判+代理権付与の審判 ※2
審判についての
本人の同意 
不 要  必 要
(民876の4Ⅱ) 
必 要 
(民876の9Ⅱ)
※1  開始審判のときは、職権で選任します。
※2  補助開始の審判は、同意権付与の審判又は代理権付与の審判とともにすることが必要です(民15条3項)。
※3  代理権付与の対象となる法律行為の例
 ①  財産管理に関する法律行為(預貯金の管理・払戻し、不動産その他重要な財産の処分、遺産分割、賃貸借契約の締結・解除等) 
 ②  身上監護(生活又は療養看護)に関する法律行為(介護契約、施設入所契約、医療契約の締結等)
(これらの法律行為に関連する登記・供託の申請、要介護認定の申請等の公法上の行為を含む。)
※4  民法13条1項所定の行為
民法13条1項所定の行為の概要は、次のとおりです。
 元本を領収し、又は利用すること(1号) 
 借財又は保証をすること(2号)
 借財とは、金銭消費貸借契約により債務を負担するほか、取引通念上これに準ずる行為も含まれると解されている。
 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること(3号)
 ・抵当権の設定
 ・土地賃貸借の合意解除
 訴訟行為をすること(4号) 
 贈与、和解又は仲裁合意をすること(5号) 
 贈与を受けることはOK
 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること(6号) 
 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること(7号) 
 新築、改築、増築又は大修繕をすること(8号) 
 民法602条に定める期間を超える賃貸借をすること(9号)
・山林の賃貸借10年~
・山林以外の土地の賃貸借5年~
・建物の賃貸借3年~
・動産の賃貸借6か月~ 
 以上
                                                                    

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