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新保険法について−2

弁護士   中村美絵

平成22年2月15日更新

 前回に引き続き新保険法を紹介します。
 今回は、新保険法で、保険契約者や保険金受取人等を保護するために設けられた規定についてとりあげます。

4.保険契約者や保険金受取人等を保護するために設けられた規定
 保険法では、保険契約者や保険金受取人等をより一層保護するために、従来の保険契約に関するルールの見直しが行われました。
 具体的には、@契約締結時の告知に関するルールの整備(告知制度の整備)、A保険金の支払時期に関する規定の新設、B他人を被保険者とする死亡保険契約の被保険者からの契約解除請求権、C保険金受取人の介入権(保険契約の存続)等があります。また、保険契約者等を保護するための重要なルールについては、法律よりも保険契約者等に不利な約款の定めを無効とする規定(片面的強行規定)も設けられました。
 以下では、告知制度の整備、保険給付の履行期に関する規定の新設、片面的強行規定に関して、簡単に解説したいと思います。

(1)告知制度の整備
 保険加入に際して、保険契約者または被保険者は、重要事項(保険者が保険の引き受けの可否を決めたり、保険料の算定の根拠となるような事項)について、告知義務を負います(保険法4条、37条、66条)。そして、保険契約者または被保険者が、故意または重大な過失により事実の告知をせず、又は不実の告知をした場合には、保険契約は解除され(保険法28条、55条、84条)、保険金が支払われないこともあります(保険法31条、59条、88条)。
 従前の商法では、保険契約者が自主的に重要な事実について申告しなければならないとされていました。しかし、保険契約者からすると、何が重要な事実にあたるのかわからないうえに、自らの判断で重要な事実にあたらないとして申告しなかったばかりに、保険者から告知義務に反するとして解除されてしまうおそれがあり、これでは、保険契約者保護に失することになります。そこで、保険法では、保険会社が告知を求めてきた事項について回答すれば足りるとする質問応答義務に変更になりました。
 また、保険契約者等に告知義務違反があったとしても、保険媒介者(例えば、保険会社の営業の人など)による告知妨害があったり、保険媒介者が不告知又は不実告知を勧めたり(教唆)した場合については、保険者は、保険契約の解除ができないことと明記されました(保険法28条2項、55条2項、84条2項)。

(2)保険給付の履行期に関する規定
 従前の商法では、保険金の支払時期についての規定がありませんでした。しかし、保険法では、保険給付の履行期に関する規定を新設し、保険者が適正な保険給付を行うために必要な調査をするための合理的な期間が経過した後は、保険者は履行遅滞の責任を負うと定められています(保険法21条、52条、81条)。この規定により、支払の不当な遅延を防止しています。

(3)片面的強行規定
 保険法では、保険契約者保護の要請の高い規定を中心に片面的強行規定を多数設けました。片面的強行規定とは、保険法の規定よりも契約者側に不利な約款や合意は無効とするというものです。ここでいう保険契約者保護の要請の高い規定の例としては、すでに紹介しました、告知義務違反による解除の規定や、保険金給付の履行期に関する規定等になります(保険法33条、26条等参照)。

 前回から2回にわたり、新保険法について紹介させていただきました。新保険法は、いよいよ今年の4月から施行されます。新保険法の施行に伴い、保険に関するトラブルが減少することを期待したいものです。


【参考文献】
・法務省ホームページ http://www.moj.go.jp
・「新しい保険法の理論と実務」(別冊金融・商事判例 経済法令研究会)
・「保険法ハンドブック 消費者のための保険法解説」(日本評論社)など

 

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