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民事執行法の改正について

弁護士 田中素樹

令和2年2月7日更新

 令和2年4月1日より、改正民事執行法が施行されます。今回はその中で、財産開示手続の変更、債務者以外の第三者からの情報取得手続の新設について説明します。

1 問題意識
  たとえ金銭の支払を認める旨の判決を取得しても、債務者が金銭を支払わない場合は、満足を得ることができません。そのような場合、債権者が対象となる財産を特定した上で、強制執行によって債務者の財産を差し押える必要があります。たとえば、養育費の取り決めにしたがって支払を請求するにあたって、給与債権や預金債権を差し押さえるという方法があります。
 しかしながら、相手方の勤務先がわからない、預金口座の銀行はわかるが支店はわからない、といったことを理由に強制執行できないことがあります。
 そこで、強制執行の実効性を確保するための制度として、財産開示手続というものがあります。
 これは、執行裁判所が債務者を呼び出し、自身の財産に関する情報を陳述させるというものです。もっとも、現行法上は、金銭債権にかかる強制執行の申立てに必要とされる債務名義のうち、仮執行宣言付きの判決等、執行証書又は確定判決と同一の効力を有する支払督促については、これらに基づく財産開示手続の申立てが認められていません。また、債務者が財産の開示を拒否することが多く、必ずしも実効性があるとは限らないのが現状です。

2 財産開示手続の変更
 上述のように、現行法上は財産開示手続の申立権者が確定判決等を有する債権者に限定されていました。
 そこで、今回の改正では、公正証書等であっても財産開示手続の申立てができるようになります(改正法197条)。
 これにより、たとえば公正証書で養育費を決めているような場合にも、財産開示手続が利用できるようになります。

3 債務者以外の第三者からの情報取得手続の新設
  また、債務者が財産の開示を拒否することへの対策として、債務者以外の第三者からの情報取得手続が新設されました。
 現行法では、勤務先や預金口座については債務者から情報を取得するしかありませんが、債務者が情報開示に応じないことが多く、実効性に欠けるところがありました。そこで、今回の改正により、金融機関から預金債権に関する情報を取得したり、市町村や日本年金機構等から勤務先に関する情報を取得したりできる手続が新設されました(改正法206条、207条)。
 これにより、預金債権や給与債権の差押えの実効性が高まることが期待されます。

 以上
                                                                    

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