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新保険法について−1
弁護士 中村美絵
平成22年2月1日更新
皆さん、保険に加入していますか?おそらく、「はい。」と答える方は、たくさんいらっしゃると思います。
日本における生命保険の加入率は、約8割とも言われています(生命保険文化センター「生活保障に関する調査」平成19年度)。 生命保険だけでなく、医療保険、自動車保険、火災保険など複数の保険契約を締結している方も多いと思います。
また、現在保険に加入していなくても、将来、保険の加入を検討しているという方もいらっしゃるのではないでしょうか。このように、保険は、私たちの生活に広く普及しています。
一方で、保険の制度が複雑であることから、自分の加入している保険について、正しく理解できていないことが多く、保険の消費者トラブルが増加しているともいわれています。
そこで、今回は、平成20年5月に新しく制定され、今年4月から施行予定の「保険法」という法律を、皆さんに紹介したいと思います。
1.保険法とは
平成20年5月30日に、保険や共済に関する基本的な契約ルールを定めた「保険法」(平成20年法律56号)という新しい法律が制定されました(同年6月6日に公布)。この保険法は、平成22年4月1日から施行されます。
2.保険法制定の背景
これまで、保険契約に関するルールは、商法の中に定められていました。しかし、商法の保険契約に関する規定は、明治32年の商法制定後、100年近くにわたり、実質的な改正がなされていませんでした。そのため、表記はカタカナ、文語体のままであり、現代社会において広く普及している傷害疾病保険に関する規定が存在せず、現在の保険制度に適合しない内容になっていました。そこで、現代社会に適合した適切なものにする必要があるとして、今回、商法の保険契約に関する規定を全面的に見直し、独立した法律として「保険法」が制定されました。
3.保険法の特徴
保険法の特徴としては、以下の点が挙げられます。
@共済契約への適用範囲の拡大
A傷害疾病保険に関する規定の新設
B保険契約者などの保護のための規定の整備
C賠償責任保険契約における被害者の優先権の確保
責任保険契約における保険給付は、本来、被害者への損害賠償に充てられるべきものです。そこで、被保険者が倒産した場合でも、被害者が保険金から優先的に被害回復を受けられるようにするための先取特権の規定が新設されました。
D損害保険についてのルールの柔軟化
保険金額が保険価格を超える契約も原則的に有効であることを前提として、超過保険や重複保険についてのルールの柔軟化が図られています。
E保険金受取人の変更についての規定の明確化
保険金受取人の変更の意思表示の相手方は保険者であること、遺言による受取人の変更も可能であること等を明文で規定しています。
Fモラルリスク防止のための規定の新設
重大な事由があった場合に、保険者が契約を解除できる旨の規定が新設されました。
Gひらがな・口語体への標記の変更
以上の保険法の特徴の中から、次回は、保険契約者の立場であることの多い皆さんに関係する、『B保険契約者等の保護のための規定』の内容について、紹介していきたいと思います。
(次回に続く)
【参考文献】
・法務省ホームページ http://www.moj.go.jp
・「新しい保険法の理論と実務」(別冊金融・商事判例 経済法令研究会)
・「保険法ハンドブック 消費者のための保険法解説」(日本評論社)など
日本における生命保険の加入率は、約8割とも言われています(生命保険文化センター「生活保障に関する調査」平成19年度)。 生命保険だけでなく、医療保険、自動車保険、火災保険など複数の保険契約を締結している方も多いと思います。
また、現在保険に加入していなくても、将来、保険の加入を検討しているという方もいらっしゃるのではないでしょうか。このように、保険は、私たちの生活に広く普及しています。
一方で、保険の制度が複雑であることから、自分の加入している保険について、正しく理解できていないことが多く、保険の消費者トラブルが増加しているともいわれています。
そこで、今回は、平成20年5月に新しく制定され、今年4月から施行予定の「保険法」という法律を、皆さんに紹介したいと思います。
1.保険法とは
平成20年5月30日に、保険や共済に関する基本的な契約ルールを定めた「保険法」(平成20年法律56号)という新しい法律が制定されました(同年6月6日に公布)。この保険法は、平成22年4月1日から施行されます。
2.保険法制定の背景
これまで、保険契約に関するルールは、商法の中に定められていました。しかし、商法の保険契約に関する規定は、明治32年の商法制定後、100年近くにわたり、実質的な改正がなされていませんでした。そのため、表記はカタカナ、文語体のままであり、現代社会において広く普及している傷害疾病保険に関する規定が存在せず、現在の保険制度に適合しない内容になっていました。そこで、現代社会に適合した適切なものにする必要があるとして、今回、商法の保険契約に関する規定を全面的に見直し、独立した法律として「保険法」が制定されました。
3.保険法の特徴
保険法の特徴としては、以下の点が挙げられます。
@共済契約への適用範囲の拡大
A傷害疾病保険に関する規定の新設
B保険契約者などの保護のための規定の整備
C賠償責任保険契約における被害者の優先権の確保
責任保険契約における保険給付は、本来、被害者への損害賠償に充てられるべきものです。そこで、被保険者が倒産した場合でも、被害者が保険金から優先的に被害回復を受けられるようにするための先取特権の規定が新設されました。
D損害保険についてのルールの柔軟化
保険金額が保険価格を超える契約も原則的に有効であることを前提として、超過保険や重複保険についてのルールの柔軟化が図られています。
E保険金受取人の変更についての規定の明確化
保険金受取人の変更の意思表示の相手方は保険者であること、遺言による受取人の変更も可能であること等を明文で規定しています。
Fモラルリスク防止のための規定の新設
重大な事由があった場合に、保険者が契約を解除できる旨の規定が新設されました。
Gひらがな・口語体への標記の変更
以上の保険法の特徴の中から、次回は、保険契約者の立場であることの多い皆さんに関係する、『B保険契約者等の保護のための規定』の内容について、紹介していきたいと思います。
(次回に続く)
【参考文献】
・法務省ホームページ http://www.moj.go.jp
・「新しい保険法の理論と実務」(別冊金融・商事判例 経済法令研究会)
・「保険法ハンドブック 消費者のための保険法解説」(日本評論社)など