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転貸の法律問題

弁護士 小西宏

平成30年9月7日更新

 今回のリーガルトピックスは、賃貸物件のオーナーの立場で、借主が又貸し(転貸)したときの法的問題点です。設例を交えながらご説明いたします。

 【設例】
  私はAが飲食店を行いたいということで、仲介業者を介して、その所有するビルの一室を貸すことにしました。ところが、部屋をAに賃貸した途端、Aは無断でその店をBに貸してしまったようです。
(1) 契約違反であるとして、AとBに明渡しを請求できるか。
(2) Bに貸すことに私が同意していた場合はどうか。
(3) Aが、「Bは経営を委託している店長であり、又貸ししたわけではない。」と主張してきた場合はどうか。

 ・転貸とは・・・物件を賃貸人から借りている賃借人がさらに別の者にその物件を貸すこと、いわゆる又貸し。

民法612条
 (賃借権の譲渡及び転貸の制限)
第六百十二条  賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
2  賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。

【設例に対する回答】
(1) 契約違反であるとして、AとBに明渡しを請求できるか。

 承諾のない転貸は民法612条違反であり、ABとの賃貸借契約を解除することは可能です。Bは不法占有となるため、所有権に基づき明渡請求もできます。
 ただし、転貸が背信行為といえない場合(転貸が親族関係や個人事業主が法人成りして法人が使用している場合等)は解除ができません(最高裁S28.9.25)。

(2) Bに貸すことに私が同意していた場合はどうか。

 同意しているので、無断転貸とはならず、解除・明渡しはできません。Aとの間で賃貸借契約を合意解除しても、Cに退去を求めることができません。なお、転貸に承認すると以下のような様々なリスクが生じます。
【転貸承認のリスク】
・  転貸借は、賃借人(転貸人)が利ざやを得るために、転借人に対し、賃料よりも高額な転貸料を設定する。
   →高い転貸料を支払うために、転借人は多少無理な経営に走る。究極的には違法営業(違法な客引き、無許可営業など)につながる。
賃借人から支払われる賃料のみに関心がいき、転借人がどのような者か関心がなくなる。
店を使用(占有)している者が頻繁に変わり、誰が借りている(占有している)のか分からなくなる。
→契約解除後に明渡しを実現するのが困難。

(3) Aが、「Bは経営を委託している店長であり、又貸ししたわけではない。」と主張してきた場合はどうか。

 AのBに対する経営委託の内容・経営の実態(収益の帰属やBがAの指揮監督を受けているかなど)などから、BがAを排除して独立して、その部屋を占有ないし使用収益している場合は転貸に当たり、解除が認められます。

以上 
                                                                    

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