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最高裁判決のご紹介 - GPS捜査は違法と判断 -
弁護士 村上智裕
平成29年3月21日更新
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平成29年3月15日、GPS捜査の違法性について判断した最高裁判決が出ました。ニュースに取り上げられるなど、話題になりましたのでご紹介します。
本事案で問題とされたGPS捜査とは、被告人が複数の共犯者と共に犯したと疑われた窃盗事件につき、被告人本人の承諾なく、かつ、令状も取得することもなく、自動車にGPS端末を取り付けた上、その所在を検索して移動状況を把握したというものでした。問題とされたのは、本件GPS捜査が、本人の承諾もなく、かつ“令状が取得されないままに”実施されたという点です。
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任意捜査の原則と強制処分法定主義という考え方があります。
これは、警察などの捜査機関が行う捜査活動は、強制処分によらないものを原則とすべきであり、強制処分による捜査は予め法律に定めがある場合に限定される、という考え方です。日本は憲法と法律でこの考え方を採用しています。
強制処分とは、個人の重要な利益を侵害する処分(捜査)のことをいい、具体的には、逮捕、勾留、捜索、差押え、検証などがあります。
この強制処分法定主義は、立法によって、行政(捜査機関)に対して歯止めをかけることを趣旨としており、人権保障や三権分立の考え方から採用されているものです。
また令状主義という考え方があります。
憲法は、何人も、原則として、裁判官の令状がなければ逮捕されることはなく、また住居、書類および所持品について侵入、捜索および押収を受けることはない旨を保障しており、これを令状主義といいます。
この令状主義とは、司法によって、行政(捜査機関)に対して歯止めをかけることを趣旨としており、やはり人権保障や三権分立の考え方から採用されているものです。
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これらの法制度によって、「強制処分は、原則として、強制処分法定主義を満たし(すなわち、捜査機関は、予め法律がある場合でなければ強制処分はできない)、かつ、令状主義の原則(すなわち、捜査機関は、裁判所の令状を取得してからでないと強制処分はできない)を満たすものでなければならない」ことになっています。
もっとも、ここには、任意捜査と強制捜査との区別の基準をどうするか、や、新しい技術によって可能となった(従来の捜査方法とは異なる)捜査方法をどう捉えるか、などいくつかの論点があり、本事案では、GPS捜査に関するそれらの論点に対して最高裁判所の判断がなされました。
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最高裁判所は、GPS捜査について、「対象車両の時々刻々の位置情報を検索し、把握すべく行われるものであるが、その性質上、公道上のもののみならず、個人のプライバシーが強く保護されるべき場所や空間に関わるものを含めて、対象車両及びその使用者の所在と移動状況を逐一把握することを可能にする。このような捜査方法は、個人の行動を継続的、網羅的に把握することを必然的に伴うから、個人のプライバシーを侵害し得るものであり、また、そのような侵害を可能とする機器を個人の所持品に秘かに装着することによって行う点において、公道上の所在を肉眼で把握したりカメラで撮影したりするような手法とは異なり、公権力による私的領域への侵入を伴うものというべきである。」としたうえ、「令状がなければおこなうことができない処分と解すべきである」と判示しました。
要するに、最高裁判所は、GPS捜査について、「強制処分」であることを明確にしたわけであり、「GPS捜査が今後も広く用いられる有力な捜査方法であるとすれば、その特質に着目して、憲法、刑訴法の諸原則に適合する立法的な措置が講じられることが望ましい。」との同判示は、正面から強制処分法定主義遵守の要請を説いたものと言えます。
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新しい捜査方法は、その有効性から犯罪検挙に資し、また、その客観性から自白に頼らない捜査方法という側面はありますが、あくまで捜査方法である以上、人権保障とのバランスの要請は欠かせません。
なお、本事案の決着ですが、GPS捜査によって直接得られた証拠及びこれと密接な関連性を有する証拠の証証拠能力は否定されましたが、その余の証拠によって被告人の有罪が認定できる、としたのが今回の最高裁判所としての判断でした。
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以上 |
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