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賃貸借契約の保証人の相続について

弁護士 天野雄介

平成28年3月15日更新

 賃貸借契約の保証人が亡くなった場合、保証債務が相続されるのかについて、法律上は規定がありません。
 どのような保証債務でも保証人が亡くなったときに既に発生している債務については相続の対象となります。
 しかし、保証人が亡くなった後に発生する債務については、保証の種類によって結論が異なります。
 例えば、「一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約であってその債務の範囲に金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務が含まれるもの」は貸金等根保証契約と言い(民法465条の2)、典型的には会社の代表取締役が会社の金融機関から融資について保証する場合となりますが、この場合は、保証人が死亡したことが貸金等根保証契約における主たる債務の元本の確定事由になりますので(民法465条の4B)、保証人が亡くなった後に発生する元本債務は相続されません。
 また、限度額及び責任期間につき定めのない根保証契約、いわゆる包括根保証契約については、判例・通説は、保証債務は承継されないとしています。
 最判昭和37年11月9日も、継続的取引に関する包括根保証契約について、その相続性を否定しています。
 他方、特定の債務についての保証債務や根保証債務であるが限度額又は責任期間のいずれかについて定めのある限定的な根保証契約は相続されるとされています。
 賃貸借契約については、前回のリーガルトピックスに記載したとおり、更新後も保証債務は継続されるため、責任期間の限定はありません。
 しかしながら、賃貸借契約から発生する債務については、賃料や原状回復義務が中心であり、保証人において債務の範囲が想定できるものであることから、限定的な根保証契約と判断され、相続性は肯定されると思われます。
 古い判例では大判昭和9年1月30日や、東京地判平成22年1月28日も賃貸借契約の保証人の債務の相続性を認めています。
 したがって、賃貸借契約の保証人の債務の相続は肯定されます。
 賃貸人としては、保証人が亡くなった際には、保証人の相続人が相続放棄をする可能性もありますので、新しい保証人を賃借人に求めることが必要でしょう。
 保証人としては、賃貸借契約の保証人の地位が相続されることを念頭にして、保証債務の存在は相続人にはわからないことが多いため、遺言書に記載したり、賃貸借契約書の写しを保管したりして、亡くなった際に相続人に保証債務の存在を知らしめる手段を講じる必要があるでしょう。

  以上
                                                                    

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