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パワハラについて

弁護士 水口良一

平成28年2月18日更新

 都道府県労働局等に設置した総合労働相談コーナーに寄せられる「いじめ・嫌がらせ」に関する相談は年々増加し、平成24年度には相談内容の中でトップとなっているそうです。
 そこで、今回は、パワハラについて、検討したいと思います。

 パワーハラスメントとは、法律上、一義的な定義があるわけではありません。
 そもそも、パワーハラスメントとは、2001年に東京のコンサルティング会社が創った和製英語です。その際には「職権などのパワーを背景にして、本来業務の適正な範囲を超えて、継続的に人格や尊厳を侵害する言動を行い、就労者の働く環境を悪化させる、あるいは雇用不安を与える」と定義されました。
 また、「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ」(2012年)においては、パワーハラスメントについて「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えるまたは職場環境を悪化させる行為をいう。」と定義されています。
 なお、パワハラの典型的な6類型として、以下のような内容が挙げられています。
 
 1. 暴行、傷害 ・・・ 身体的な攻撃
 2. 脅迫、名誉毀損、侮辱、ひどい暴言 ・・・ 精神的な攻撃
 3. 隔離、仲間外し、無視 ・・・ 人間関係からの切り離し
 4. 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害 ・・・ 過大な要求
 5. 業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと ・・・ 過小な要求
 6. 私的なことに過度に立ち入ること ・・・ 個の侵害
 
 ところで、先ほど述べたとおり「パワーハラスメント」を一義的に定義することは困難ですので、裁判において、損害賠償が認められるか否かは、次のように判断がなされることになります。

⇒パワーハラスメントを行った者とされた者の人間関係、当該行為の動機・目的、時間・場所、態様等を総合考慮の上、企業組織もしくは職務上の指揮命令関係にある上司等が、職務を遂行する過程において、部下に対して、職務上の地位・権限を逸脱・濫用し、社会通念に照らし客観的な見地からみて、通常人が許容し得る範囲を著しく超えるような有形・無形の圧力を加える行為をしたと評価される場合に限り、被害者の人格権を侵害するものとして民法709条所定の不法行為を構成する。(ザ・ウィンザー・ホテルズインターナショナル事件-東京地判 平24・3・9)

 ところで、パワハラが問題となった場合には、労働基準監督署への労災申請等がからむ場合が多く、問題が長期化し、あるいは職場全体のモチベーションが低下することが多々あります。したがって、損害賠償請求訴訟で勝訴するか否かという観点よりも、いかにパワハラ問題が起きないような職場環境を創っていくのかという観点の方が重要なように思います。
      以上
                                                                    

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