ホーム > リーガルトピックス >平成19年 >消費者庁発足とその対応-2
消費者庁発足とその対応-2
弁護士 村上智裕
平成21年12月15日更新
前回、「事業者の保護・育成を主な目的とする各監督官庁が、縦割りで、いわば派生的問題として取り扱ってきた、これが従来の消費者行政の在り方でした。この在り方を、ダイレクトに『消費者の救済・保護』を目的とする専門庁を創設し、そこに消費者行政の司令塔機能を与えるという方式に変更する。これが消費庁設置の発想です。」と記載しました。
この発想から、消費者庁には、各省庁に対する勧告・措置要求、消費者への注意喚起・公表、事業者に対する勧告・命令、すき間事案への対応、等といった役割と権限が与えられております。(すき間事案とは、権限や責任の所在が不明確な事案のことで、従前の消費者行政の在り方では、「縦割り行政」の弊害が顕在化した場面です。中国産冷凍ギョウザ事故などが例に挙げられます。)
また、この役割と権限を十分に果たすことができるよう、消費者庁には、行政機関・地方公共団体・国民生活センターなどから、被害拡大のおそれのある消費問題の関連情報が一元的に集約されることになり、「消費者に身近な諸法律」も移管されました。
現在、消費者庁が所管する法律は以下のものです。
・物価統制令(昭和二十一年勅令第百十八号) ・食品衛生法(昭和二十二年法律第二百三十三号) ・農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(昭和二十五年法律第百七十五号) ・宅地建物取引業法(昭和二十七年法律第百七十六号) ・旅行業法(昭和二十七年法律第二百三十九号) ・出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(昭和二十九年法律第百九十五号) ・割賦販売法(昭和三十六年法律第百五十九号) ・家庭用品品質表示法(昭和三十七年法律第百四号) ・不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号) ・消費者基本法(昭和四十三年法律第七十八号) ・生活関連物資等の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律(昭和四十八年法律第四十八号) ・消費生活用製品安全法(昭和四十八年法律第三十一号) ・有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律(昭和四十八年法律第百十二号) ・国民生活安定緊急措置法(昭和四十八年法律第百二十一号) ・特定商取引に関する法律(昭和五十一年法律第五十七号) ・無限連鎖講の防止に関する法律(昭和五十三年法律第百一号) ・貸金業法(昭和五十八年法律第三十二号) ・特定商品等の預託等取引契約に関する法律(昭和六十一年法律第六十二号) ・製造物責任法(平成六年法律第八十五号) ・住宅の品質確保の促進等に関する法律(平成十一年法律第八十一号) ・消費者契約法(平成十二年法律第六十一号) ・金融商品の販売等に関する法律(平成十二年法律第百一号) ・電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律(平成十三年法律第九十五号) ・健康増進法(平成十四年法律第百三号) ・独立行政法人国民生活センター法(平成十四年法律第百二十三号) ・特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(平成十四年法律第二十六号) ・食品安全基本法(平成十五年法律第四十八号) ・個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号) ・公益通報者保護法(平成十六年法律第百二十二号) ・消費者安全法(平成二十一年法律第五十号) ・米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律(平成二十一年法律第二十六号) (未施行) |
消費者庁が所管することになったからといって、それで直ちに法律の規制内容に変化が生じるというわけではありません。しかし、所管が変われば、それにあわせ法規の運用が変更されることは当然に考えられるところです。特に消費者庁は完全に「消費者目線」で事に当たります。例え、業界から見れば過剰な反応に見えるような事案であったとしても、「業界事情」などいう抗弁は立たなくなるでしょう。その場合、前例を踏襲し折衝すればいい、という考えは通用しなくなってしまいます。
消費者庁による情報開示で事業者名やブランドが公表された場合、その事業者やブランドが被るダメージの大きさは図り知れません。
消費者庁の行方や評価はまだまだこれから、という段階です。しかし、事業者にとっては、平素からの対策(例えば、自社がもつ消費者窓口の充実などが挙げられます)に加え、「事が起きたときに如何に対応するか」という有事の体制構築(必要に応じ、円滑に、状況説明、注意喚起、自主回収、法的手続きなどの各措置を採ることができる体制を講じておく必要があります)がますます重要となってくることは間違いないでしょう。