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裁判員裁判について−1
弁護士 阪尾晋一
平成21年11月2日更新
皆様ご承知のとおり、平成16年5月に「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」が公布され、5年の準備期間を経て、今年の平成21年5月21日から施行されました。マスコミの報道などにより裁判員裁判が注目され、裁判員裁判による判決も出ているところであります。
そこで、今回は、世間の注目を浴びる裁判員裁判を取り上げ、裁判員が選任されるまでの手続きの流れや裁判員の辞退事由などについて、ご説明したいと思います。
まず、裁判員裁判とは、国民の中から選ばれた裁判員が裁判官とともに刑事裁判に参加し、検察官の主張する事実が認められるかどうかを認定し、有罪の場合には被告人に科する刑の重さを決める制度のことです。
裁判員裁判の対象となる事件は、殺人罪、強盗致死傷罪、現住建造物等放火罪、危険運転致死傷罪などの重大犯罪に限られています。また、刑事事件のみですから、民事事件について裁判員が参加することはありません。
それでは、次に、裁判員が選任されるまでの手続きをご説明します。大きく分けて、次のような流れをたどることになります。
(1)裁判員候補者名簿の作成 → (2)名簿記載者に対する通知・調査票の送付→ (3)事件毎の裁判員候補者の選定
→(4)選任手続期日のお知らせ(呼出状)・質問票の送付 → (5)選任手続期日での裁判員の選任
各項目について説明しますと、
(1) 毎年秋頃に、各市町村の選挙管理委員会が選挙人名簿から抽選で翌1年間の裁判員候補者の名簿を作成し、各地方
裁判所に名簿を送付します。
(2) 12月頃、裁判所から、(1)の名簿に記載された人に対して、名簿に記載されたことが通知されます。同時に調査票が送付され
ますが、名簿に記載された人は、その調査票に従って、裁判員になることについて支障や希望があるか否かを回答することにな
ります。
(3) 実際に裁判員裁判の対象となる事件が裁判所に起訴され、審理予定が立てられますと、(1)の名簿の中から抽選で裁判員
候補者が選ばれます(この時点では、ひとつの事件毎に50人から100人の裁判員候補者が選ばれる予定です)。
(4) 裁判員選任期日の遅くとも6週間前までに、抽選で選ばれた(3)の裁判員候補者に対して、(2)の調査票の回答によって辞退
が認められない限り、裁判所から選任手続期日のお知らせ文書(呼出状)が送付されます。また、同時に質問票も送付されま
すので、候補者は、その質問票に従って、再び裁判員を辞退する事由があるか否か、その理由などを回答することになります。
なお、ここで注意して頂きたいのは、呼出状が届いた場合には、原則として、指定された選任手続期日に裁判所に出頭しなけ
ればならないということです。仮に正当な理由なしに裁判所に出頭しなかった場合には10万円以下の過料に処せられることが
ありますので、くれぐれもご注意下さい。
(5) (4)の選任手続期日において、裁判所から、選任手続きや事件の概要について説明があり、再度、裁判員を辞退する事由の
有無、その理由、さらには不公平な裁判をするおそれの有無などについて質問を受けることになります。その結果、最終的に問
題がなければ、抽選により6人の裁判員が選任され、必要に応じて、補充裁判員も選任されることになります。
このようにして、裁判員は選ばれます。
では、具体的に裁判員を辞退できる事由とは、いかなる事由のことでしょうか?
(次回に続く)