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中小企業の事業再生支援の強化について−2

弁護士   寺中良樹

平成21年9月15日更新


   さて、この制度の創設により、誰でも簡単に第2会社方式が利用できるようになったのかというと、そのように早合点すべきではないようです。

 最も重要な点は資金です。第2会社方式を事業譲渡によって行う場合には、適正な(つまり債権者が同意する)事業譲渡代金を旧会社に入れて配当の原資とする必要があります。また第2会社の当面の運転資金も確保する必要がありますので、第2会社に資金を入れる必要があります。
 この点に関して金融支援の制度ができましたが、資金融通の条件や額は未だ不明な点もあり、無条件に必要な額が全部調達できるとは考えない方が良いでしょう。したがって、再生計画の策定にあたって、スポンサーの確保はほぼ必須と考えるべきでしょう。ただし、金融支援がなされれば、スポンサーの負担が軽くなるため、スポンサーとして支援しやすくなるという効果はあるでしょう。

 また、この制度を利用するためには、合理的な再生計画案を策定して、中小企業再生支援協議会や私的整理ガイドラインなど、公平性が担保されている手続を経由する必要があります。このような手続には最低でも3〜4ヶ月は必要でしょうから、その間、運転資金の確保ができていなければなりません。このような再生手続を始めた後に、通常の運転資金を金融機関から融通してもらうことはほぼ不可能と考えておくべきですから、来月の運転資金もないという状態になってからこの制度を使おうと思っても、手遅れになるのです。

 第2会社方式は、民事再生のように、多数決で強制的に債権をカットするものではなく、基本的には債権のカットを受ける債権者の全員の同意が必要です。多くの事案では、金融機関や親会社が債権のカットを受け入れるということになるのでしょうが、東京や大阪のような大都市では、中小企業でも多くの金融機関が関与していることが多いため、金融機関の足並みが揃わないことが多くあります。このような場合は、再生支援協議会や事業再生ADRの助けを借りて調整するということになるのでしょうが、ここが、会社の代理人である私たちの腕の見せ所とも言えます。

 第2会社方式には上記のようなハードルがあるとは言え、裁判上の手続を経由せずして債権カットを達成できるスキームとしては、非常に魅力的です。
 私も、申立代理人として民事再生手続に関与する機会がありますが、多くの事案で、事業価値の毀損に悩まされます。民事再生を始めると、社会的には「倒産会社」と認識されてしまい、取引先が失われてしまうので、利益が上がらなくなってしまうのです。本来であれば、民事再生は倒産ではない、民事再生の意義をもっと理解していただきたいと言うべきところなのですが、このような理解が浸透することは一朝一夕にはいかないと思いますので、第2会社方式の積極的な活用を考えていくべきであろうと思います。

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