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中小企業の事業再生支援の強化について−1
弁護士 寺中良樹
平成21年9月15日更新
平成21年6月22日に、中小企業の事業再生支援の強化を目的として、「産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法」(以下では、「産活法」といいます)が改正されました。
改正の要点は、企業の再生スキームの一つである「第2 会社方式」を使いやすくするということのようです。
第2の会社方式とは、過剰債務状態に陥っている会社について、優良な事業部門を切り離して別会社に移動させ、残りの債務超過の部分を清算して事業の維持を図るという再生手法です。もちろん財産隠しのようなものではなく、債権者に説明を行い、その同意を得て行なうものです。事業部門を別会社に異動させる際には、正当な対価を旧会社に支払い、旧会社はこれを債権者に配当して(当然全額配当はできませんが)清算することになります。その結果、旧会社の過重な債務は別会社に残りませんので、債務のカットと同じ効果が得られることになります。
事業部門を「別会社に移動」させる手法としては、会社分割と事業譲渡があります。
第2会社方式と同様に、負債をカットしながら事業を継続するために、民事再生手続を利用することも考えられます。しかし、民事再生手続に比べて、第2会社方式には、次のようなメリットがあります。
(1) 法的整理(一般に「倒産」と言われているもの)を避けることになるので、会社の信用不安を少なくすることができ、事業価値の低下を抑えることができること。
(2) 債権者に対して一律の取り扱いをしなくても良く、たとえば買掛金を払いながら金融機関の負債をカットするという扱いが可能となること。
一方、第2会社方式を採用する際には、次のような点に注意しなければなりません。
(1) 事業に許認可が必要である場合、旧会社の許認可は当然には第2会社には引き継がれませんので、第2会社が許認可を取得するまでの間、事業に空白が生じます。
(2) 第2会社方式を事業譲渡方式で行なうとすると、事業用の不動産等の移転に伴い、登録免許税・不動産取得税などの税金の負担が発生します。
(3) 第2会社方式を事業譲渡方式で行なうとすると、事業の取得のために、新規の資金調達が必要となります。
この点について、第2会社方式の利用をしやすくしたのが、今回の産活法の改正です。
具体的には、事業再生計画について経済産業大臣等の認定を受けることにより、
(1) 事業に係る許認可を承継できる特例措置が設けられました。
(2) 登録免許税・不動産取得税が軽減される措置が設けられました。
(3) 日本政策金融公庫の低利融資や、投資育成会社による出資対象範囲の拡大などの金融支援措置が設けられました。
(次回に続きます)