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日本企業のシンガポールへの進出について-1 (弁護士 礒川剛志)

シンガポールは、東南アジアの中心に位置する淡路島ほどの国土しかない都市国家ですが、近時、ますますその存在感を増しているように見えます。

シンガポールが発展する背景事情としては、①東南アジアの“ビジネスハブ”、②大中華圏の一翼を担う存在、③イギリスの歴史的影響が指摘できます。また、④都市国家故の思い切った国家政策もその発展を強力に後押ししています。

東南アジアのビジネスハブということで言えば、タイ、マレーシア、ベトナム、インドネシアといった東南アジア諸国のほぼ中心に位置しているという地理的な優位性があります。そのため、外国企業が東南アジアに進出する際、シンガポールに統括本部を置くといったケースが多々あることになります。また、シンガポールの玄関であるチャンギ国際空港もいわゆる“ハブ空港”としての地位を確立していると言えるでしょう。

次にシンガポールは多民族国家ではありますが、その人口の8割が中華系の人々であり、香港、台湾、在外華僑といった大中華圏の一翼を担うという側面もあります。中国の発展に伴い、その側面が強調されつつあるのではないでしょうか。

また、歴史的な経緯により、イギリスの文化的影響を強く受けており、法律等もイギリス法の影響を強く受けた、判例を重視するいわゆる“コモン・ロー”の国になっています(ちなみに、日本は、制定法を重視する大陸法の法体系に属しています)。

そして、最後に積極的な国家政策ということですが、良くも悪くも一党独裁政権が続き、政治的に極めて安定しています。また、小国であるが故に、思い切った政策が可能であり、特定の成長分野に集中的に投資するといった政策が実行されています。

特に近時は、カジノの設立を解禁したり、ユニバーサルスタジオを誘致したりといった観光政策に関するニュースを見られた方もいるのではないでしょうか。さらに、“バイオポリス”という特定の地域に、バイオ企業を世界中から誘致し、優遇措置を講じるといった政策が大胆に実行されています。もともと低い法人税率に加え、政府が力を入れている分野の企業には大きな優遇を行い、世界中から優良な企業や人材を集めているわけです。逆に生産性の低い製造工場などは、“要らない”というメリハリの効いた政策が実施されています。

シンガポールに既に進出している日本企業の状況ですが、在留邦人は26,000人(2007年10月現在)と言われており、日系企業も2000社以上はあるであろうとのことでした。特に街中で目立つのは、建築現場の日系建設会社と、居酒屋チェーン等の飲食関係の進出です。飲食関係の進出が多いのは、シンガポールが日本食ブームであるということと、やはり進出し易いシンガポールで海外進出の様子を伺い、成功したら、タイやマレーシアでもやってみようという発想ではないかと推測されます。もちろん、その他の日系の事業会社も多く進出しており、東南アジアの統括本部を置いて、他の国々の現地法人をシンガポールでコントロールするといった機能を担わせているようです。ローカルの弁護士さんによれば、最近は、日系企業の相談で、東南アジア諸国の現地法人のグループ再編や整理統合を依頼されるケースが増えているとのことでした。

(次回に続く)

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