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一時所得か、雑所得か(はずれ馬券は経費なのか)

弁護士 村上智裕

平成26年12月2日更新

 一時所得とは「利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう」とされています(所得税法34条1項)。
 一方、雑所得とは「利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得」です(所得税法35条1項)。
 すなわち、両者の違いは、当該所得が「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないもの」に当るかどうかという点にあり、“営利性や継続性がなく、かつ、対価性がなければ”一時所得に、“そうでなければ”雑所得にあたる、とするのが法の規定です。

 現在この点について係争中であるのがマスコミ等でも話題になっている競馬脱税訴訟です。
 この事案は、会社員の男性が、独自のシステムをもって平成17年から平成21年の間にJRAで開催されている期間の全競馬場のほぼ全レースの馬券を購入し続けていたところ、この間に合計約36億6000万円の配当を受けたというものです。一方、この男性は、馬券の購入のために合計約35 億500万円を費やしたそうです。
 同訴訟においては、“競馬の馬券で得た利益”について、国税当局が「一時所得にあたる」と主張しているのに対し、ご本人は「雑所得である」と争っています。

 この事案において“一時所得の該当性”が争点になっているのは何故なのでしょうか。
 ポイントは、“はずれ馬券の購入費用の経費該当性”にあります。
 一時所得を規定する所得税法34条2項は「一時所得の金額は、その年中の一時所得に係る総収入金額からその収入を得るために支出した金額(その収入を生じた行為をするために、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る。)の合計額を控除し、その残額から一時所得の特別控除額を控除した金額とする」と規定しています。すなわち、一時所得の場合、経費として控除できるのは、「その収入を生じた行為をするために、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る」ということになり、これを競馬にあてはめると“はずれ馬券の購入費用は経費として控除できない”ということになります。
 一方、雑所得の場合、経費として控除できるのは、「総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額」です(所得税法37条1項)。このように雑所得の場合、「その年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用」も経費として控除できることになるため、競馬においては “はずれ馬券の購入費も経費として控除できる”ということになります。

 同事案に対する一連の訴訟では、一審も控訴審も“競馬の馬券で得た利益”を「雑所得」にあたると認定しており、あとは最高裁の判断を待つ状態です(刑事事件のほうです。検察官の上告が受理されています。一方、課税処分の取り消し訴訟のほうは、現在、控訴審段階です。)。一審、控訴審が「雑所得」にあたるとしたのは、同事案における特殊な馬券購入行為の「営利性」、「継続性」に着目した結果だったわけですが、最高裁がどのような判断をするのか、注目です。
 もっとも、当然のことながら、通常の“趣味的な馬券購入行為”には「営利性」「継続性」は認められず、その場合の“競馬の馬券で得た利益”は「一時所得」です(所得税基本通達34−1)。“先の事案について競馬の馬券で得た利益を「雑所得」にあたるとする立場”からは、あくまで同事案は特異なケースであり、かかる基本通達が発出された当時、想定されていなかったもの、と捉えられることになります。
 以上
                                                                    

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