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YahooやGoogleの検索結果の表示差し止め

弁護士 天野雄介

平成26年11月12日更新

 検索サイトで自己の名前を検索すると過去の逮捕記事が検出され、名誉毀損及びプライバシー侵害があるとして、Yahooに対し、人格権に基づき検索結果の表示差し止めや不法行為に基づき慰謝料などを求めた訴訟の判決で、平成26年8月7日、京都地裁は請求を棄却しました。
同じ原告はGoogleに対しても同様の訴訟を行っていますが、これも同様に棄却されています。

 原告が過去の逮捕記事自体の削除を求めず、検索サイトに検索結果の表示差し止めを求めた理由は、逮捕記事自体は転載され、膨大な量となっており、現実的に全てを削除することは難しいことから、逮捕記事自体ではなく、一般的に多く利用されている検索サイトであるYahoo とGoogleをターゲットとして検索結果の表示差し止めを行えば、一般の人の目に触れる可能性は大きく減ずることからではないかと思います。

 Yahoo やGoogleの検索結果が単なるウェブアドレス(例えば 「http://www.global-law.gr.jp/index.html」)などが羅列されるだけであれば、そのアドレスをたどっていかなければ過去の逮捕事実などには結びつかないため、権利侵害の程度は大きくありませんが、ウェブサイトへのリンク(当該ウェブサイトのタイトルが、同タイトルをクリックすると当該ウェブサイトを開くことができる状態で表示されたもの)やスニペット(リンク先サイトの記載内容の一部が自動的かつ機械的に抜粋されたもの)が表示されると、自分の名前を検索すると過去の逮捕事実がすぐに目に飛び込んでくるという状態となっているため、就職・結婚から子供の進学まで大きな影響が生じる可能性があります。

 この点、そもそも前科を公開されないという利益が保護に値するのかという点も問題となりますが、最判昭和56年4月14日判決において「みだりに公開されないという法律上の保護に値する利益を有する」とされております。

 そこで、前科が記載されている記事がインターネット上で残存している状態が、法律上の保護に値する利益の侵害となっている前提において、本件の実質的な争点は、どこまでが表現の自由の範囲内として違法性が阻却されるのか、どこまでが表現の自由の範囲を超え違法と評価されるのかという線引きの問題です。
この点法律上は、名誉毀損について刑法230条の2第2項において「公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実」については公共の利害に関する事実とされており、原則として違法性が阻却されることになっていますが、公訴提起後の記事については基準がありません。

 このような表現の自由とプライバシー権等の適法・違法を線引きをする基準を策定することは、その表現内容・表現方法・プライバシー侵害の程度などが事例ごとに異なるため、かなり困難ではあります。
憲法的な観点からすれば、公権力が表現の自由に対して規制を行うことは抑制的でなければなりません。
他方でYahoo やGoogleのような検索サイトは既に社会インフラとなっています。
とすれば、少なくとも違法であることが明らかな事案においては、検索結果を削除することが認められるべきではないでしょうか。
本件のような犯罪報道の場合もあれば、全く未に覚えのない虚偽の記事の場合もあり、そのような虚偽の記事が拡散した場合に法的手続きしか対応策がないというのはあまりにも酷ではないかと思います。
そして、違法な書き込みの削除についてはプロバイダ責任制限法が存在し、違法な書き込みについてプロバイダ等が削除できることとなっていることと比べれば、記事を削除をするより検索サイトに表示させないほうが表現の自由に対する規制の程度も低いのではないかと思います。
 そこで、検索サイトについても法律やガイドラインを制定し、ある一定の基準に該当する場合には、検索結果を表示させないように要求できることとするべきではないかと思います。

                                                                    

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