本文へ


リーガルトピックス(Legal topics)

ホーム > リーガルトピックス > 平成24年 >定期借家契約における説明文書の別個独立性の要否について

リーガルトピックス(Legal topics)

一覧に戻る

定期借家契約における説明文書の別個独立性の要否について

弁護士 天野雄介

平成24年11月8日更新

 期間の定めがある建物の賃貸借をする場合において、契約の更新がないこととする旨を定める場合には、借地借家法第38条による要件・様式による定期借家契約を締結する必要があります。
 その要件の中でも、説明文書の交付説明義務とされる借地借家法第38条2項は「前項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。」とされています。
 この規定について、平成24年9月13日、注目すべき最高裁判例が出されました。
 事案は、説明文書について別個独立して作成されていないが、借地借家法38条2項記載の内容が賃貸借契約書案に記載され、それが事前に賃借人に送付されていた事案であり、東京高裁は賃借人が賃貸借契約書に契約の更新がないと記載されていることを認識していたため、さらに別個独立の説明文書を交付する必要性に乏しいとして、別個独立の説明文書は不要との解釈を行いました。
 これに対して、最高裁は、東京高裁と異なり、どのような事情があろうとも説明文書は別個独立な文書として必要との解釈をとりました。
 これは紛争の発生の未然の防止のために、個別具体的な事情を排除し、形式的・画一的に別個独立の説明文書を要するとしたものです。
 これにより、今後の実務は契約書とは別の文書で説明文書を交付し、受領書を徴収するという手続が行われていくことになるかと思われます。
 しかし、問題は、これまでの契約で、契約書と説明文書を兼ねていた場合についての対処であろうかと思われます。
 書籍には、「契約書と説明書面を兼ねることができるという考えもある」「契約書の署名と別に、確かに以上のような説明を受けましたなどといった趣旨の署名をもらっておくべき」などと記載されていることもあったため、そのような兼用契約書になっている案件も多数存在すると思われます。
 通常の賃貸借契約では何らかの不備があった場合、契約更新時に新しい契約書で巻き直すことや何らかの念書を取得しておくなどの対応も考えられますが、借地借家法第38条2項の説明文書の場合「あらかじめ」という限定がある以上、事後に何らかの措置を行っても適法となることは難しいと思われます。
 本件最高裁判例の存在と、説明文書の不存在という不備を指摘されないことを祈るだけかもしれません。
 以上
                                                                    

一覧に戻る

リーガルトピックス(Legal topics)