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予約契約の利用について(2) 各論

弁護士 天野雄介

平成24年4月24日更新

1 農地の売買予約契約について
   農地の売買契約においては、通常、農地法5条の都道府県知事の許可が必要です。
 農地法5条の許可がない限り、土地の移転登記が出来ませんので、許可を得るために売主と買主が協力して許可申請をする必要があります。
 その許可申請をする前に売買契約を締結することが通常ですので、その際の契約形態として、農地法の許可がなされた後に予約完結の意思表示を行う売買予約契約行うことが考えられます。
 もっとも、予約契約のメリットは、予約完結権を有する一方の当事者が予約完結の意思表示をするかしないかの選択権を有するという点にあると思われますので、本件のように農地法5条の許可が出れば双方問題なく本契約とする場合にはあまりメリットがなく、農地法5条の許可を停止条件とする通常の売買契約で十分かと考えられます。
 また、予約契約の場合、予約完結権の意思表示が相手方に到達することが必要となりますので、その点でも必要な作業が増える(相手方が通知を受領しない場合など)点でデメリットもあります。
 農地の売買契約など一定の制約があるが、他の契約条件が決まっている場合は、予約契約ではなく停止条件付き売買契約が適切と思われます。

2 建物完成前の建物賃貸借予約契約について 
   建物完成前において、例えば、建物の一部を入居者(例えばテナント)の希望に合わせて変更する場合などは、建物完成後に賃貸借契約を締結出来なかった場合、その変更が無駄になる可能性があり、建築主の立場としては、建物完成前においても建物賃貸借予約契約を締結する必要があります。
 もっとも、建物完成前であっても建物の仕様などが決まっているのであれば、賃料発生日を建物完成後とする通常の賃貸借契約を締結すれば十分です。
 そのため、建物賃貸借予約契約は建物の概要が決まっていない段階に賃貸借契約を締結する必要がある時(例えば、建築主が賃借人に貸すことを前提に倉庫を建築する場合に設計段階から賃借人の関与がある場合など)に賃貸借予約契約を締結することが考えられます。

3 代物弁済予約 
   代物弁済予約とは、債務者が履行期に弁済しないときに、債務の返済に代えて、その所有する不動産等の所有権を債権者に移転する旨の予約をいいます。
 代物弁済予約について、対象の不動産に仮登記を設定することが可能ですので、債権者の担保的機能を有するものとなります。
 また、代物弁済についての予約完結権は債権者のみが有しますので、代物弁済を受けるか否かという選択が可能となり、予約契約のメリットがある契約形態です。
 もっとも、代物弁済予約は現在は、仮登記担保法により規制されており、あまり利用されていないようです。

4 まとめ
   予約契約は、@本契約を締結する要素が不足している場合(物件の特定や公正証書の作成など)及びA予約完結の意思表示の選択権を有することに意味がある場合に利用すべき契約形態であると考えられます。

                                                                    

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