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女性活躍推進法について

弁護士 谷岡俊英

平成28年7月6日更新

 すでにご存知の方も多いかもしれませんが、平成27年8月28日、国会において女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)が成立し、施行されています。
 同法は、301人以上の労働者を雇用する事業主に自社の女性の活躍状況の把握や課題分析等の義務を課すもので、当該事業主は早急に対策をする必要があります。
 そこで、今回は、同法について簡単に紹介をさせていただきます。

1.目的
 女性活躍推進法(以下、「本法」といいます。)の目的は以下のように定められています。
「この法律は、近年自らの意思によって職業生活を営み、又は営もうとする女性がその個性と能力を十分に発揮して職業生活において活躍すること…が一層重要となっていることに鑑み、男女共同参画社会基本法…の基本理念にのっとり、女性の職業生活における活躍の推進について、その基本原則を定め、並びに国、地方公共団体及び事業主の責務を明らかにするとともに、基本方針及び事業主の行動計画の策定、女性の職業生活における活躍を推進するための支援措置について定めることにより、女性の職業生活における活躍を迅速かつ重点的に推進し、もって男女の人権が尊重され、かつ急速な少子高齢化の進展、国民の需要の多様化その他の社会経済情勢の変化に対応できる豊かで活力ある社会を実現することを目的とする。」(本法第1条)
 近年、少子高齢化に伴う労働力不足が懸念されており、女性の潜在的能力の活用が求められていました。
 また、社会的な情勢の変化により多様な人材活用をしていく機運が高まっていました。
 そこで、女性が社会で活躍できるように支援措置について定めることでこれらの目的を達成し、豊かで活力ある社会を実現しようという目的で定められたものが本法です。

2.事業主に対する義務
 本法は、301人以上の労働者を雇用する事業主に対して、以下の事項を義務付けています。
 ここでいう労働者には、パートや契約社員であっても1年以上継続して雇用されているなど、事実上期間の定めなく雇用されている労働者も含まれるとされています。
 なお、300人以下の労働者を雇用する事業主については、以下の事項は努力義務とされています。

1) 自社の女性の活躍に関する状況の把握及び課題分析
 まず、事業主は自社の女性の職業生活における活躍に関する状況の把握し、女性の職業生活における活躍を推進するために改善すべき事情について分析をしなければならないとされています(本法第8条第3項)。
 状況把握する事項としては、①女性採用比率、②勤続年数男女差、③労働時間の状況、④女性管理職比率の必須項目を含めた全部で25項目が挙げられています。

2) 状況把握・課題分析を踏まえた行動計画の策定・届出・公表
 次に、事業主は、上記1)で把握した自社の女性の活躍に関する状況把握及び課題分析を踏まえて行動計画を策定し、厚生労働大臣(実際には都道府県労働局長)に届出を行うとともに、労働者に周知するための措置をとるとともに、対外的にも公表しなければならないとされています(本法第8条第1項ないし第5項)。
 また、事業主は、国が策定した事業主行動計画の策定に関する指針に即して行動計画を策定しなければならないとされています(同条第1項)。
 行動計画には①計画期間、②数値目標、③取組内容及び実施時期を定めなければならないとされています(本法第8条第2項)。
 国の事業主行動計画策定に関する指針では、㋐女性の採用、㋑配置・育成・教育訓練、㋒継続就業、㋓長時間労働の是正等の働き方改革、㋔評価・登用、㋕性別役割分担意識等の職場風土、㋖再チャレンジが可能な職場を挙げており、各事業主はこれについて自社の課題解決に必要な取組を選択して行動計画を策定することとされています。

3) 女性の活躍に関する情報公表
 事業主は女性の職業選択に資するようにその事業における女性の職業生活における活躍に関する情報を定期的に公表しなければならないとされています(本法第16条)。
 公表する情報は、採用した労働者に占める女性労働者の割合、男女別の採用における競争倍率等全14項目のうちから事業主が適切と考えるものを公表することとされています。

3.認定制度
 本法では、事業主行動計画の策定・届出を行った事業主のうち、女性の活躍の推進に関する取組の実施状況が特に優良な企業については、厚生労働大臣の認定を受けることができるとされています(本法第9条)。
 認定を受けるためには厚生労働大臣に申請をする必要があり(実際には都道府県労働局で申請をする)ますが、認定を受けた企業は、厚生労働大臣が定める認定マークを商品などに付することができることになります。

4.その他
 本法は、平成38年3月31日までの時限立法です。
 そのため、事業主行動計画の計画期間の決定に際しては、計画期間内に数値目標を達成することを念頭に10年間を数年単位で区切ること、定期的に行動計画の進捗を検証しながら改定を行うことが望ましいとされています。
 なお、本法については厚生労働省の女性活躍推進法特集ページ(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091025.html)に詳細に記載されています。
  以上
                                                                    

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